Impressions 読者の感想

期待される役所へ ~行政経営のムリ・ムダ・ムラを突破する!

著者:元吉 由紀子     発行:ぎょうせい(2012年)  価格:2,190円(税別)

感想

2014/10/18

都内関係団体 研修企画担当

日頃より大変お世話になっております。
まずは、前回メールにてご連絡した後、だいぶ時間が経ってしまいましたこと お詫び申し上げます。 
元吉先生の著書「期待される役所へ」を読ませていただきました。 大変恐縮ながら、今回も率直な感想を書かせていただきます。 (まとまりがない箇所もございますが、どうぞご容赦ください。)

・1作目に増して、役所体質の特徴の説明があり、私にとって改めて考えさせられる内容が多く、大変参考になりました。
 今回、組織管理力の向上を図るための研修を企画する上で、役所の実態を踏まえることは有意義なことだと考えます。

・先生は、「組織風土の問題は、習慣として無意識に身につけてきていることから、あらためてそこに問題があるとは気づかない場合が多々あります。」とおっしゃっていますが、その通りだと思いました。それに加え、役所体質に起因する様々な問題等があるわけですから、「改革・改善」に成功し、それを組織に定着させていくことは容易ではない、と思いました。

・役所であればこそ陥りやすい問題症状(生活習慣病)について、以下のとおり説明されており、また、チェックポイントは全部で21あると書いておられます。
(1)組織の仕組み 「改革」によって策定された各種の仕組みが不整合を起こし、「改革のムリ」が生じている症状
(2)風土・体質 仕組み環境が整備されても、仕組みの意図や目的を十分共有しておらず、本来の意図とは異なる使い方になっていたり、効果的に活用しきれていないためにムダが生じている症状
(3)住民へのサービス提供 サービス品質にムラができ、類似の取組みを繰り返す「サービス向上活動がマンネリ化している症状」(=着実に住民に対するサービス向上につながっていない状況)  

 上記(1)~(3)の中で、個人的には特に(2)が興味深かった印象です。今の自分はどうなのか?と、問題症状がより身近に感じられたのも、最も印象に残った理由のひとつかと思います。 私個人としましても、ぜひとも、ぬくもりのある職場づくり、コミュニケーションの質の向上 を目指していきたいと思います。
 また、(3)のチェックポイントで、「サービス向上のための意識付けや年中行事が一過性に終わっている。」とあり、「意識改革研修」についても言及されています。 おっしゃる通り、私も非日常であり、単発の研修・講演で意識そのものを変えるのは不可能だと思います。今回の研修が、一人でも多くの管理監督職員にとっての刺激となり、新たな視点、あるいは広い視野の獲得につながればと思っております。そういった意味では、今回の研修は、先生にお示しいただいた研修目的①~③のうち、③の「日頃徹底をしそびれている全体への浸透、波及を補い定着するものとして活用」することが、主な目的に該当するように考えております。

・一方で、小さなことから少しずつ改善を行ってみようという気持ちもわきました。「自分が日々、いかに目の前の仕事にしか目を向けられていない。」ことに改めて気付かされました。

・先生は本の中で、「自治体で講演をするときには聴講者に四つの問いを投げかけ、挙手で答えてもらうようにしています。」と書かれています。果たして、東京都職員、また、今回の研修の対象者である局職員のうちどれくらいの人たちが、「改革」そのものを意識しているのだろうかと思いました。(※私は、都職員で、この4月から財団に派遣されている身分です。) もちろん、「改革」という概念をどう捉えるかによって、例えば、「改革を行っていますか?」との質問への回答の仕方にも、かなりの幅が出てきそうですが・・・

・総合計画の関連では、折しも東京都は、都政運営の新たな指針として、概ね10年間(2024年まで)を計画期間とする「東京長期ビジョン(仮称)」を策定することとしています。先月中旬に中間報告があり、意見募集をした後、12月に最終報告を行う予定です。 先生のおっしゃるとおり、自分の業務の関連で参照することはありますが、改めて実際に手にして読むことはないのが正直なところです。

・「はじめに」の箇所に記述されていましたが、「災害時に求められるような、俊敏かつ柔軟で果敢な思考や行動を身に付けていくためには、地方分権を実現する日々の改善・改革活動にある。」とのこと。
 本研修の目的のひとつに、「危機管理の知識習得と意識高揚を図る。」とありますので、危機管理の視点を踏まえた講義内容の可能性も含め、後日、先生には御相談させていただく予定でおります。

・「本書は、役所の長である首長から職場の第一線で働く職員までを対象に、両者を結び付ける部課長を要として、役所に改善体質を創り上げていくための実践ノウハウ集」とのこと。 今回の研修については、最初に先生からもアドバイスがありましたが、対象を管理職(部課長級)、または、非管理職(課長補佐級、係長級)のいずれかに絞る方向で、局の研修担当とも話合いを進めて行こうと思っております。

 今月初めに、この本を読み終えたのですが、感想をまとめる余裕がなかったため、ご連絡が遅くなり大変申し訳ございませんでした。また、読後数週間が経過したこともあり、的外れのことを申し上げている箇所があるかもしれません。どうぞお許しください。

2013/11/10

京都府精華町 総務部 財政課長浦本 佳行

JIAM「シニアマネジャー研修」 2013年11月7日「組織経営とリーダーシップ」

 <課題図書『期待される役所へ』感想>
読み終えてのまずの感想は、行政経営の有益な参考書だと感じました。  
書かれてあることは、まさに筋の通った説得力のある内容でありました。なるほどと感嘆したものの、実際に行動に移すとなると、これが実に難しい。頭で理解しても体が覚えていないとなかなか行動に移らない典型でないかと思いました。  

何点か気になったうちのひとつが、P41に「組織目標が業務目標の列挙に終わっている」という項目がありました。
まさしくこの指摘のとおりであり、本町では全庁的に組織目標を設定する仕組みがないのですが、私の課の運営方針として、年度当初に課内会議で組織目標を発表しています。しかし、自分の心の内では組織目標を示しているゾなどと自己満足に浸っているだけであることを、改めて自覚しました。  

また、図書の最後で(P214)、「管理職を育成する」という項目があります。本町では団塊の世代の大量退職により、管理職の世代が大幅に若返り、管理職経験3年未満の管理職が半数近くを占めています。  
議会対応を始め、これまで担当者として事務を進めていた役割と管理職として求められる役割は、当然のことながら異なりますが、本町においては、人材育成基本方針に定めている管理職として求められる能力や職責を果たすための、管理職の人材育成プログラムは存在しておらず、各管理職個人の資質や努力に委ねられており、この部分における課題の大きさを痛感しました。これから、私自身も本書をバイブルとしてひとつひとつ地道に改革に取り組みたいと思います。  

本町の現状の課題として、人材育成基本方針のとおり、これまでの組織風土は、個性的でアクの強い職員が多いものの、何か事があれば職員が一致団結をしてその難局を乗り越えてきました。例えば、財政的な危機を迎えて予算編成に苦慮した平成17年度には、管理職が管理職手当の一部を自主的に返上してその難局を乗り越えました。言われて給与カットをするのではなく、一手先に自ら行動を起こす、そういう美学がこれまでの本町の管理職にあったと感じています。  
しかし、管理職の世代交代が進む中で、管理職も小ぶりになり、本町らしい「せいか魂」が少し廃れてきたのでないかと危機感を持っています。当然のことながら時代背景も変化しているので、その変化に柔軟に対応する必要があるのも事実です。古き良き伝統を大切にし、現状に満足せずチャレンジ精神で新しい時代を切り拓く職員が求められていると考えています。JIAMのシニアマネジャー研修などを活用した、体系立てた理論的研修と、実戦の経験を積み重ねる中でまずは管理職を磨き上げる必要があるなと感じました。  

今回の事前課題の提出にあたり、上司及び部下に対して、私自身のよくない(今後変わってほしい)ところについて、アンケートもしくはヒアリングをして記述することが課せられております。人事評価における評価者である私に対して、部下が上司の欠点を正直に指摘することはなかなか難しく、よほどの人間関係や信頼関係が構築されているか、もしくは信頼関係が崩壊していて言いたい放題かのどちらかではないかと思います。また、双方の年齢の上下関係も微妙に影響するのではないかと思います。  
今回、難しいなりに工夫して、アンケート調査を無記名で封筒に入れて係長に提出してもらい、係長が取りまとめて私に提出してもらう方法をとりましたが、それでもなかなか記入しにくいことに変わりはないようです。  

一方、上司とはアンケートに答えてもらった上で、「職場の上司としての私」をテーマで1時間程度、意見交換をしました。部長職としての視点は、課長職の私とはまた異なる視点で職員を見ていることなど、今後の私の部下との向き合い方として、とても参考となりました。  
今回の事前課題をとりまとめてみて、自らを振り返り、上司や部下が自分をどう見ているかを意識し反省することで、今まで気に留めていなかった新たな発見ができ、とても有意義であったなと感じました。

2013/03/07

三重県 総務部 行財政改革推進課後田 和也

これまで、担当として行政改革や組織風土改革などに関わってきた私にとって本書は、大変、共感できる部分が多く、参考になるものでした。そうしたなかで、特に感じたところを思いつくままに記述いたしました。個人的な見解ばかりですが、一読者の感想としてお読みいだだければ幸いです。

序章 行政経営システム総点検
「組織の氷山モデル」は、非常にわかりやすい図だと思います。特にこれまでの自治体の多くは、水面上のハード部分は手直ししていくものの、水面下のソフト部分には手をつけないことが多かったのではないかと思います。本県が平成10年度に取り組んだ行政システム改革では、ここに抜本的に手を付けたことが鍵だったのかと今になって感じるところです。改革の初期にソフト部分の改革を経験し、「何のため、誰のための仕事か」と職員が考える風土づくりに取り組んだことが、その後のいろいろな成果にもつながったと感じています。「車の両輪」とご指摘されていますが、まさしくそのとおりだと思いますし、水面下の改革がない水面上の改革は意味がないとまで感じます。

自治体トップのマネジメントとして、この水面下のソフト部分(風土・体質)をいかに素早く理解・把握し、その課題・問題点を見つけることが重要ではないかと思います。一番、まずいと思うことは、こうしたことを気にしない、あるいは何となく感覚的なとらえかたしかしない、その上で水面上の目に見える部分のみを自分の思いだけで変えてしまうことではないかと思います。こうした状態では、組織は混乱するだけで、いつまでたっても思ったような成果をあげられないままに終わってしまうことになりかねないと思います。経営理念やビジョンを指し示す際には、こうした現状把握が不可欠だと考えます。

第1章 行政改革に伴って発生する三大合併症

本年度(平成24年度)、本県では政策を推進するための仕組みの見直しを行いましたが、本章に書かれている管理部門の部署間の連携不足、活用することにつながっていない仕組み、改革に職員をうまく巻き込めていない等々、まさに、見直しにあたってクリアしなければならない課題そのもののように感じました。そういった意味で、大変、参考になりました。

ここで、もう一つ共感したのは、有志のプロジェクト活動のお話です。これまで本県もいくつかの有志プロジェクトを立ち上げてきましたが、なかなか活動の広がりが見られず、メンバーが、がんばれば、がんばるほど周りから浮き上がってしまうというジレンマに悩まされてきたように思います。こうした傾向は企業にもあるのかもしれませんが、個人的な意見として、普段から競争環境(意識)の少ない自治体には特に根強いように思います。「出る杭になりたがらない」という記述もありましたが、まさしくそのとおりだと思います。自治体の中で風土改革を行ううえでは、個人的見解ですが、一部で取り組むものよりは、無理やりにでも全体(全員)を巻き込む取組が効果的だと思っています。全体が取り組む中で、出る杭を探していくといったやり方が良いのではないかと思っています。

第2章 行政改革のムリをなくす

この章も大事なことが的確に書かれていると感じました。  まず、経営理念とビジョンについてですが、地域経営と行政経営の二つの観点で見るという自治体特有の複雑なマネジメントを非常にわかりやすく表現されていると感じました。特に「地域の経営理念やビジョンというのは、住民に理解しやすく共有可能なものでなければならない」というのは、まさしくそのとおりだと思います。多くの県民の皆さんがどういう姿を目指しているのかを具体的にイメージできるものにしなければ、自治体職員も同じで、結局、具体の行動の方向性はバラバラといったことにもなりかねません。守備範囲の広さから、ついあれもこれもとなりがちですが、皆が同じ方向を向ける、より具体的な姿を設定しなければならないと思います。これは、行政経営においても同じです。「県民の信頼を高める」とは、具体的にどういったことなのか、「信頼」とはどういったもので、どう高めるのか、そういったことを事細かに明らかにしなければなりませんし、リーダーは繰り返し組織内でその目指すべき姿を語らなければならないと思います。  

また、個人的見解ですが、どういった地域にしていきたいのかといった地域の将来のめざす姿(なりたい姿)は、条例で定めるなど、ある意味簡単には変えられない仕組みが必要ではないかと考えます。首長が変わるたびにそういった姿が変わるのは、個人的には違和感が少しあります。継続的な地域づくりができず、非効率だと感じるからです。地域の将来のめざす姿(なりたい姿)は、ある意味不変で、それを目指す戦略は首長の判断(選挙)で変えていくのが、良いではないかと思います。  

そういった意味で、最後の章でも書かれていますが私もこれからの地域経営で重要になるのは戦略だと考えています。経営理念・ビジョンも、もちろん重要ですが、これからは戦略こそを共通の価値判断軸にしていく必要があるのではないかと思います。特に、何に力を入れないのか、切り捨てるのかといったことを明確にし、本当の意味で総花的ではない優先順位を地域で共有することが必要だと思います。平成8年に北川知事のもとで事務事業評価を取り入れ、本格的な事業評価が始まり、行政の世界でも選択と集中という言葉が主流になっていきましたが、その当時とは明らかに事情が変わってきているとも感じます。その当時は、目的や効果から見たときに明らかに無駄な事業がいくつもありましたが、厳しい財政状況が続く中で政策的経費が相当に絞り込まれてきた現在においては、効果はあるかもしれないがでもやめるといった本当の意味での選択と集中(事業の絶対評価から相対評価へ)が必要になってきています。この本当の意味での選択と集中を、住民を巻き込んだ形で考える新たな行政システムが求められていますが、まだ残念ながら「これだ」といったものは存在していないように思いますので、答えを探していかなければならないと考えています。

第3章 職場改善のムダをなくす

この章は、正直、一番悩み深く読ませていただきました。これまで自分たちが行政改革や組織風土改革といった中で進めてきたことの中心が、まさしくこの章で書かれていることであり、いちいちうなずきながら再確認させていただきました。しかしながら、自分たちがやってきたことの成果が今、現れているかということを振り返ってみると、まだまだと思うことばかりです。いろいろなアプローチを試しながら、一定の成果は出しつつも、ちょっと前に進んだかと思うと、何かの拍子に後退し、また前に進めようといったことを繰り返している状態で、何とかもっと先に進まないものかと悩み多いところです。

特に悩み深いのは、「リーダーがチャレンジを率先する」ということです。この中に書かれている「部課長が職場ビジョンにかけるエネルギーと温度を肌で感じられるように語ってほしい」というのは、まさしくそのとおりだと思います。これまでも、こういったことを訴え続け、そうしたことを実践されたすばらしい幹部の方々もいらっしゃいましたが、なかなかそれが広がっていかない。総論としては皆さん賛同してくれていても、実際の行動となると広がっていかない。もちろん、単なるリーダーとしての資質不足といったことで簡単に片付けられる問題でもありません。そのため、こうした課題をどのように解決していけばいいのか、まだ具体的な考えはまとまっていませんが、最終章の「マネジメントの実践学習」なども参考にしながら、今後も考えていきたいと思います。

第4章 住民サービスのムラをなくす

この章で書かれているサービス基準、サービス向上目標といった点は、これから解決しなければならない重要な課題の一つだと思っています。基準を明確にしていくことは、過去にも取り組んできたことではありますが、なかなかうまく定着していないのが現状です。

本章は、非常にわかりやすく書かれていますので、これからの参考にしていきたいと思います。
そもそも公務員にとってこの章の冒頭に書かれているように、数値で自分たちの仕事の状態を測るというのは、非常に苦手で、できれば避けたいことなのかもしれません。そういった中で、見える化しながら、その水準を維持・向上していくという組織風土に変革していく、根づかせていくには、どのようなところがポイントになるのか、こういうものがなくてはならない、あるいは仕事がこれによって楽になっていくといったことなど、何かしら必要性を実感できるような仕掛けが必要になるのだと思いますが、そういった工夫を考えていきたいと思います。

第5章 役所に改善体質を根づかせる

この章を読んで感じたことは、本県は、経営改革の第1ステップから第2ステップに移ろうと悪戦苦闘しているところなのだということでした。これまで職員の改善・改革活動の優良事例の表彰制度・発表会である「率先実行大賞」を通じて、第2ステップに移ることを模索していましたが、なかなか水平展開が進まないこともあり、本年度(平成24年度)から少しアプローチを変えてみました。賞を「MIE 職員力 アワード」と改め、新規採用職員に必ず発表会の運営や審査に携わってもらうことや、誰もが賞選出の審査員となれるよう公募の審査員枠を設けるなど、これまで以上に幅広い職員に賞制度に参画してもらって、改善・改革活動を職員にとってもっと身近なものに感じてもうらおうというのが狙いです。こうしたことから、各職場に広がっていく波及効果を期待しています。何とか、発表会を一過性のものにするのではなく、また「あの職場だからできた特殊な事例」などと言い訳をせずに、良い取組を素直に良いと認め、その中から「自分たちにも何か活用できないか」と考え、それぞれの職場が改善を自主的に行っていく、そんな組織風土となるよう今後も試行錯誤していきたいと考えています。

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