職員の働き方を変える
役所と地域を両輪で改革する
私たち「行政経営デザインラボ」は、課題が複雑化する行政組織の首長、政策推進者に、行政と企業の組織変革を2軸でコンサルティングした経験を生かし、ハンズオンで寄り添うコンサルティング。 少子高齢化、財政難、災害や感染症など環境変動が激しい中、地域の問題解決と職員の働きがいを両輪で高めつつ、時代に応じた地域の魅力を協創できる自治体の組織開発力を支援します。
What’s New
一覧へService サービス
行政経営デザインラボではコンサルティングやセミナー、講演などさまざまなサービスを用意しています
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はじめてのご相談なら
職員は皆一生懸命働いているのに、うまく噛み合っていない。いろいろ手を打っているが、疲弊するばかり。そんな組織の状態にお困りなら、まずはご連絡下さい。現状を共有、ふり返りながら隠れた問題の根っこを探索するところからご相談に応じます。
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首長向け政策企画・推進
コンサルティング首長の政策意志は、うまく行政計画に反映できているか。首長の任期に応じた経営改革の進捗プロセスをデザインし、首長と職員・行政組織、地域が連携・協創する行政経営システムマネジメントを伴走支援します。
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人事担当・企画推進担当向け コンサルティング
時代の変化に応じた政策を推進するには、常に改善・改革・革新を自律的に生み出していける人材が必要です。組織に風穴を開け、連携して課題を解決していける管理職と次世代リーダー職員を実践学習を通じて育て、増やすしていきます。
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セミナー
「地域のために役に立ちたい」との志望動機を持って入庁しても、目先の法律事務をこなす手段を目的化した仕事のやり方に陥りがちです。オープンなセミナーでは、今何のため何をすべきかを見出していくそんな公務員のセルフマネジメント力を磨く機会を提供しています。
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講演依頼
誰一人取り残さない。公務員が持てる力を最大限発揮して、仕事をよりよくできるようになることは、税金をムダにしないことを意味しています。常に時代に応じた新しい仕事の価値を生み出していくためには、ために、階層や部門、組織を越えて連携できるアジャイルな組織づくりが求められています。
講演テーマ
「期待される役所へ~トップダウンとボトムアップを連携して全員参画経営に」「どうすれば役所は変われるのか」「リーダーシップとスポンサーシップ、革新を生み出す組織づくり」など -
公務員のネットワーク、交流会
想定外の危機においてもセイフティネットとなる地域を越えた公務員のネットワークづくりを運営・支援。2000年から「公務員の組織風土改革世話人交流会」、2009年から経営幹部向け「参謀交流会」を開催、2013年から「自治体改善マネジメント研究会」、2020年から「公務員のオフサイトミーティング活用セミナー」を開催。
Voice 支援実績・実践者の声
Consulting コンサルティング
組織と地域のダブルループを統合した「行政経営システム」としてマネジメントする。
私たち「行政経営デザインラボ」は、行政組織が外向きの「地域経営」と内向きの「行政組織経営」をうまく連結しながら
一環した「行政経営システム」として機能できるよう支援します。
政策過程を行政経営システムとしてとらえ直すと、地域全体として総合計画の基本構想にある長期の市の将来像(ビジョン)向けて中期の計画を策定し、年度の結果をもとに計画を見直していく「地域経営を支えるPDSのマネジメントサイクル」と、それを年度の施政方針に落とし込み、年度内に確実に実行に移し、成果を出していく「行政組織経営を支えるPDCAのマネジメントサイクル」から構成されています。
経営システムの問題と課題は、それぞれのマネジメントサイクルに分けてとらえると解決策を導きやすくなります。
Book・Academic Activities 書籍・共同研究・学会発表
組織と地域のダブルループを統合した「行政経営システム」としてマネジメントする。
私たち「行政経営デザインラボ」は、行政組織が外向きの「地域経営」と内向きの「行政組織経営」をうまく連結しながら
一環した「行政経営システム」として機能できるよう支援します。
Column コラム
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「点」と「線」の人材マネジメントから、「面」の組織マネジメントへ
2024.02.20
年末に放映されたNHKスペシャル「メジャーリーガー大谷翔平 ~2023伝説と代償、そして新たな章へ」では、大谷選手が最新のAI技術を駆使して映し出されるあらゆるピッチャーの投球を観ながら、自身の練習を進めている様子が伝えられていました。そして、この革新的なAI技術を 使いこなしながら自分の腕を磨き上げている大谷選手の真摯な姿勢には、目を見張るものがあり、圧倒されました。 野球は、「ボール」と「グローブ」と「バット」、この基本3点セットがあれば、誰でも楽しめるスポーツです。「投げる」、「受ける」、「打つ」という ポジションは、3人で交替することもできます。至ってシンプルな構成です。 それでも、打者は、プロ野球でも打率が3割あればよいほうだとされるほど、打てるチャンスはそう多くあるわけではありません。試合では、「投げる人」「受ける人」「打つ人」は、それぞれに一球入魂でプレイしながらチャンスを懸命に見出していることでしょう。そして、これらが普段の練習のうえに 成り立っていることを考えると、計り知れない日ごろの努力の積み重ねによるもの であることがわかります。成果はその結果として生み出されるものです。 これを私たちの仕事に置き換えるならば、「仕事」と「上司(指示する人)」と「部下(指示を受ける人)」にも通じることが言えるのではないでしょうか。基本の3点セットはどの職場にもあるものです。そして、いくら業績の目標を 立てたとしても、その背景に日々の努力の積み重ねがなければ、仕事の成果を 生み出せるものにはならないのは同じはずです。 それはすなわち、いかに業績を向上できたのかは、日頃からどんな練習をして、いかに能力を向上させているのか、その能力を仕事の場でどの程度発揮できたのか、そのヒット率はどのように業績向上につながっていたのか。年度末の人事面談にあたっては、これら一連の行動を共有して、その意味、価値をふり返ることが、人事評価をする、ということになるのです。 そして、1年間の行動と結果をふり返って見えてきた問題や課題について、次年度どのように改善しようと思うのかについて、上司は部下から聴き取って、本人の改善策を一緒に立てるとともに、上司は上司としての関わり方の過不足や、育成・支援のし方をふり返り、自己のマネジメントの改善策を見出しておくことが重要です。 人事評価においては、能力評価と業績評価を別々で行なうのではなく、能力の向上と業績の向上は表裏一体ですから、両者を相互に絡み合わせてスパイラルアップできるよう、経緯をとらえておくことが、一人ひとりの人材(点)に対して人が育つ人材マネジメント(線)を実現する基本となります。 特に、昨今の行政職場では、決められた仕事を決められたやり方で遂行すれば 能力も業績も上がるといった単純なものではなくなっています。地震や新型コロナウイルスのような突発的な危機に際しては、現状を把握し、何が問題かをとらえることさえ容易ではなく、 計画を立てても計画どおりに進められるものではありません。 また、地域共生社会の実現やマイナンバーカードのような新しい取組においては、それによって何をめざし、どのようなサービスを創造していくのかの方向性も、明確に定まっているものではありません。常に手探りで、関わる多様な部門、事業者と連携、試行錯誤しながら、ありたい姿を見出し、共創していくことが必要です。 だとすれば、個々の現場で上司と部下が「線」のつながりで人材マネジメントしているだけでは事足りない状況です。異なる現場間で相互にベクトルを合わせておかなければ、お互いの取組が足を引っ張り合うことになっているかもしれません。 同じ方向に向かっている場合でも、タイミングが合わなければ ムダを生じてしまいます。全体を俯瞰する司令塔がいればよいのですが、組織的な体制が整備しきれていない段階では、それぞれの取組の中核メンバーがハブとなって、相互に連絡を取り合い、自律的に調整をし合うことが重要になってきます。 大谷選手が、MLBで優勝するために、チームを移籍したのは、個人の力では及ばない組織力が必要だという選択によるものでした。個力を高める「線」の人材マネジメントを超えて、組織力を高める「面」を築く組織マネジメントを行なうには、それぞれの部署の責任者が、組織を越えて動き、連携を図り、上下・左右の壁を破って斜めのつながりを 見出しながら、自律的に動くチームを機能させていく働きかけが重要です。 昨今の自治体では、個人の負荷が増加して心身に支障を来す職員が増える一方、有能な職員が離職するケースが増えているとの声も聴きます。人事評価制度を単なる評価で終わらせない、人と組織がともに育つ運用に 経営レベルを高めていく必要があるのではないでしょうか。 「仕事」「上司」「部下」の基本の3点セットも、課題が変わり、組織が複数にまたがり、メンバーが多様になれば、それらを組み合わせる組織マネジメントレベルは各段に上がってきます。 NPO法人自治体改善マネジメント研究会では、 今年度から始めた「公務員の組織風土改善セミナー」で、それぞれの自治体のリアルな組織課題の解決に向け、新しい組織マネジメントのあり方に挑戦するメンバーが取組を進めています。 参加メンバーは、元吉由紀子編著『自治体を進化させる公務員の新改善力 ~変革×越境でステップアップ』にある改善活動の12場面を意識しながら、変革プロセスのポイントを相互学習して、マネジメントスキルを高める実践をしているところです。 2023年度の「公務員の組織風土改善セミナー」の成果共有会を、3月23日(土)19:30~WEBで開催予定しています。 次号のメールニュースでは詳細のご案内ができるかと存じます。職場のキーパーソンや、課長補佐、課長、次長、部長、副市長など管理職の方々には、おそらくここでしか聞けない貴重な組織マネジメントの実践報告を聞くことができる機会になるかと存じます。ぜひご予定を空けて、楽しみにお待ちください。
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人間が集まる組織を動かしていく対話の重要性
2024.01.16
私は普段企業の方々と仕事をしています。そのため行政組織とのお仕事は少ないのですが、毎年、政策研究大学院大学で年に1度開催される3週間の夏期短期特別研修で、地方自治体の職員の方々とご一緒する機会があり、ファシリテーションの講義やワークショップを行なっています。 そこで感じるのは、企業の方々に比べて、行政職員の方々はご自身の意見をあまり積極的に発言されないということです。ある時、あまり議論にならないので、反対意見を言う役や質問を積極的にする役など、役割をもって議論をしていただきました。すると、話し合いが著しく活性化したのです。 そこで、私が参加者に「役割を持つと発言が活発になるんですね」と言ったところ、「それはそうです。私たちは役人なので」と答えが返ってきました。つまり「役人」とは「役があると遂行する人」という意味です。 この言葉は、行政職員の方々の一つの側面を見事に表現しているものだとそれから思うようになりました。 (1)機械のように組織を運営してきた経緯と現状 よくよく考えると、行政職員の方々は国や首長が決めた方針や施策を 確実に執行するのがミッションなので、例え自分自身が違う考えを持っていたとしても基本的には定められたミッションに従うしかないという構造になっています。 この構造のもとでは、自分自身の意見を持ち、表現することより、上位方針を確実に執行できるように手段を考えること、動くことが求められます。企業でも多かれ少なかれこの構造はあるのですが、 行政組織にはより強く役割を果たすことが求められているのだと思います。 この構造を企業では、産業革命以降の工業化社会に築き上げてきました。組織を機械のように見立て、全体がうまく動くように機能に分割し、その機能に当てはめられた人はその機能をきちんと果たせるようにして働くという構造です。これを機械論的組織観にもとづく組織運営と言います。したがって、働く人は部品となり、その部品は役割をきちんと果たしていないとほかの部品に取り換えられるか、指導という名の修理をされるのです。 これに加えて日本では、本来持つ縦社会の風土や平成時代の効率化や目先の成果を強く求められる風潮が加わりました。それによって企業では、一人ひとりがきちんと目に見える成果を出さなくてはいけない雰囲気に なっていったのです。行政組織に言い換えると、一人ひとりがきちんと役割を果たさないといけない風潮が 強くなっていったのだと思います。 その結果、現状はどうなっているかというと、組織内で一人ひとりの孤立化が増え、組織間の壁も強くなっています。 仕事ができる人とできない人が二極化し始め、仕事ができる人に大きな負担がのしかかる状況を生んでいます。組織内の助けあいや意思疎通が弱くなったため、分断のしわ寄せを特定の個人が受けることになっているのです。 (2)組織の自然治癒力であるコミュニケーション (1)の状況下になってやっと人々は“組織”に関心を持つようになってきました。つまり、どうやったらバラバラになった人と人をつなぐことができるのか、違いのある人同士が協働できるようになるのか、という人間の集まりとしてとらえた組織への関心です。 その証拠に組織に関する本がすごく増えましたし、売れています。 組織をよくするために多くの人がフォーカスするのがコミュニケーションです。直感的に多くの人は組織にとってコミュニケーションが大事だとわかっています。しかし、面倒だし、心の痛みを伴う可能性を感じるので、できるだけ避けようとします。その一つが仕組みや仕掛けでどうにかしようとするアプローチです。しかし、どちらも最終的にはコミュニケーションが必要になってきます。病気や怪我をして手術した後も最終的にはその人が持つ自然治癒力がないと 完治しないのと一緒というわけです。 (3)感情交流を重視した対話 コミュニケーションには2種類の交流があります。役割交流と感情交流です。役割交流とは、役割同士で必要なコミュニケーションをとることです。感情交流は、人間同士の情緒的な交流のことです。役割を分けて効率化を進めていった結果、役割交流は過多になりましたが、感情交流が少なくなり、人間関係がギクシャクしています。これら2種類の交流をバランスよく行なうことが組織でも大事なのです。 感情交流は目に見える成果に直結しないため省かれがちですが、こういった交流をする時間を意図的に生み出すことが 組織運営にとって今必要なことだと思っています。生活や遊びも「ひとり」を重視する方向に進んでいます。それはそれで、世間や周りを優先してきた日本人にとっては 「自分を大事にする」という大切なプロセスかもしれません。 しかし、その延長線上に、自分の考えや感じていることを大切にしながら、相手の考えや感じていることも大切にする、 双方向に人と人がコミュニケーションをとっていくことを 私は「対話」と呼んでいるのですが、この力を個人も組織も身につけていかなければ 今の局面を乗り越えていけないのではないでしょうか。 特に行政組織は政策分野が広く、役割分担も専門性の違いも多くあるため、困難度は高いと思いますが、働いているのはやはり人です。人が幸せに働いていくには、対話という観点を抜きにしては 人の価値観が多様化していく時代に対応していけないと思うのです。 そう感じ、自分の周りで「対話」の場が少しでも増えていくことを願って、このコラムをしめたいと思います。
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企業の人的資本経営の動向から学べること
2023.12.22
産業構造の急激な変化と少子高齢化や人生100年時代の到来、個人のキャリア観の変化など、取り巻く環境が大きく変化する中で 2020年から経済産業省が始めたのが持続可能な企業価値を向上する人的資本経営の研究と実現に向けた取組です。 ▼参考:経済産業省 人的資本経営についての取組 https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html 人的資本経営とは、人材を「資本」としてとらえ、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる 経営のあり方です。企業ではこのための情報開示が上場企業から義務付けられるようになったため、いかに実現するかについての情報が各種媒体で多く報じられるようになりました。おそらくこの流れは、近いうちに自治体や行政組織にもやって来ることでしょう。 そこで、今の企業の動向を垣間見つつ、行政組織においても取り入れるとよいと思われる課題とポイントを3つお伝えしたいと思います。 1)トップと職員が一体感を持って変わっていく これまでも時代の節目では、急激な環境変化に伴って企業の変革が求められることがありました。それは新しい商品やサービスの開発から、事業の多角化や撤退、グローバル展開、買収や合併、グループ全体の再編までさまざまです。 そんな中、今回の生成AIを含むDXや、少子高齢化に伴う労働力人口の不足とコロナ禍で加速した働き方改革や生産性の向上には、これまでの量的な変革よりも質的な変革のウェイトが高まってきている気がします。そのため、小手先の手法ではすまされない “トランスフォーメーション”が必要になっているのでしょう。 それには社長や役員などトップの経営陣が自ら率先して変わろうとする本気を語り、姿勢として示して組織全体に働きかけていくことが不可欠です。そこから組織内にうねりが起こり始め、取組が広がり、やがて一体感が生み出されるようになってきます。 しかし、自治体ではトップが組織を牽引していくことが 企業より何倍も難しいと感じられます。それは、首長が公選で選ばれ、職員の身分とは大きく異なる存在だからです。経営全体に責任を持つ存在は首長と副首長だけであり、その関係も、多くの企業では前社長がCEOとして残ってCOOを支えている二重構造とは異なります。また、自治体の幹部層には、専務取締役や常務取締役となる存在は不在で、各部局長は縦割りの執行役員として機能している状況です。 そこで、首長が行政組織のトップとして職員と一体感をもって変革に臨むには、まず首長から副首長と部局長までの幹部層が思いを一枚岩にしていくことが、取組当初の重要な第一歩となってくるのだと思います。 2)新しい価値観で取り組む人材を育てる環境づくり 企業が組織全体を変えていくとき、キーとなるのが取組を牽引できる人材の育成です。 ここで一番問題になるのは、既存の組織の役職者たちが、 必ずしもその人材にあてはまるとは限らないことにあります。なぜなら、彼らは過去に功績を上げてきた人たちであり、過去の成功体験で身に着けた思考・行動が染みついている可能性が高いからです。 そのため、頭では変わる必要があると理解し、その重要性は認識していても、身体がすぐにはついていかないのです。 ※この難しさについては、「X(トランスフォーメーション)に取り組む プロジェクトの落とし穴」と題して9月号のコラムに書きましたのでご参照ください。 https://gyousei-degn.jp/column/2023/09/post-146.php それには、どんな人材を評価していくのかの基準を策定し、その基準で職員を評価・育成する役割を担っている人事部署も、同様の難しさを抱えています。これまでの基準によって組織を統制してきた手前、その基準を一斉に変えることは困難なものです。 いかに既存の基準と新しい基準を織り交ぜながら、組織全体の転換を図っていくのか、その道筋を築くことは一朝一夕にできるものではありません。 組織の実態をとらえつつ、個々の人の能力やスキルを、 その背景にある資質やキャリア全体から再評価し、それぞれの人の強みを生かしながら未知の可能性を引き出し、新しい基準に基づく人材を育成していくことが求められます。 そこで、先進的な企業では、個々の人に着目した人材育成・人材開発を超えて、人やその関係性を含めた組織を変革していく組織開発を手掛ける役割を持つ部署を 設け始めました。それは、人的資本経営でも、人事戦略と経営戦略を接点づけてとらえていくことの重要性が謳われているように、個々の「点」となる人だけでなく、組織という「面」に働きかけていく支援力が 必要になるからです。 役所では人事や人材育成を所管する部署に「職員課」という名称が多く付されていますが、これからは首長・副首長などの特別職を含めて能力開発や成長を図っていけるよう、より広く対象をとらえた「人事課」に名称を変えたり、組織全体をトランスフォーメーションしていくには 「組織開発課」といった部署を設けることなどを考慮していくとよいのかもしれません。 また、人事を所管する役職には、政策の戦略と合わせて既存の組織にはない価値観で革新を生み出せるよう、人事の面でも経営レベルで組織イノベーションを起こしていける責任者(CHRO:最高人事責任者)を 設置することがポイントになってくるのではないでしょうか。 3)イノベーションにつながるダイバーシティ&インクルージョン 変化が激しく先行きが不透明なVUCAと言われる環境下では、変革に向けてあらかじめ計画を立てても、そのとおりに進めることが困難になっています。計画にないことでも必要に応じて主体的に時代最適な価値を生み出すイノベーションを起こしていく、それをもとに計画も見直していける 柔軟な組織づくりが重要です。 それには、同質化した一つの価値観、思考・行動パターンに留まらず、異なる価値観、思考・行動パターンを受け入れ、多様性の中からさまざまな接点で 新しい結合と可能性を生み出していく機会を多く持っておくことが有効です。 例えば、組織内においては部署を越えて連携や横串を刺す取組を実施したり、組織を越えて外部との協働や共創する場面を設けたり、 さらに、地域を越えて交流や連携をする人を増やすなど、各種の越境活動が考えられます。 これらは、通常の企業よりも、常に多様な主体で地域を担っている自治体や行政の得意とするところでしょう。 ただし、自治体や行政は企業と異なりエリアを独占した団体であり、エリア内で職住が接近した生活のもと、終身雇用が保障されていることから、あえて担当部署や地域から出て関係を広げていこうとする職員は、なかなか見当たらないのが現状です。 そこで、これをいかに当たり前にできるかが課題となってきます。まずはダイバーシティ&インクルージョンを人材の採用や働き方の側面だけでなく、業務プロセスの中に組み入れていくことが重要なポイントになってきます。 私が代表を務めているNPO法人自治体改善マネジメント研究会では、組織マネジメントを司る役割にある副首長やその経験者を中心とした有志の方々と「自治体における人的資本経営をめざす研究会」を立ち上げ、5月から一緒に検討を重ねています。年度末には、この研究会から新しい提言を出す予定をしていますので、またの機会にその報告ができるかと存じます。
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