Impressions 読者の感想

地方が元気になる 自治体経営を変える改善運動

著者:   編著:自治体改善マネジメント研究会代表 元吉 由紀子  発行:東洋経済新報社(2015年)  価格:2,100円(税別)

感想

2015/10/06

神戸大学大学院経営学研究科 教授・現代経営学研究所(RIAM)所長金井 壽宏

マネジメントという言葉は、「管理」とか「経営管理」と訳されることが多い。
後者だと、組織体全体の理念や戦略という方向づけにかかわる経営と連動したマネジメントを連想できなくもないが、「管理」という言葉だけを聞くと、ネガティブな響きもある。管理と聞いて、わくわくするひとはいない(経営とか、よき戦略とか、ビジョンとかを、経営者やリーダーから聞くと、わくわくすることがあるのと対照的だ)。マネジメントの標準的定義は、「<こと>を成し遂げてもらうこと(getting things done through others)」という無味乾燥なもので、この言葉から夢を感じることはむつかしい。みなに成し遂げもらう<こと>が、ビジョンだったり、戦略だったり、リーダーの熱き想いというように表現されれば、ぐっとリーダーシップに近づくが、管理のイメージは、粛々ときちんとものごとが成し遂げられるという側に傾斜している。

「リーダーシップ」と「マネジメント」の対比は、学問的にも実践的にも、二分法によくある誤解に満ち溢れているが、実際に実践しているひとが、この両者をどう感じて、どのように実践し、どのような状態をそれぞれに対して理想としているか、議論するのがよいだろう。多少ギスギスしても、破天荒であっても、変革を起こすリーダーシップ、粛々ときちんとものごとが進捗されているマネジメント—どちらも大事で、一方を<いいもん>、他方を<わるもん>にする筋合いのものではない。

その機微を、実際の経験や観察に基づいて理解してもらうために、これまでに出会ったひとのなかからで、「すごいリーダー」に該当すると思うひとと、「できるマネジャー」に当てはまると思うひとを、ひとりずつ実際に接したことのある人物から選んでもらう。それから、それぞれの人物がフォロワーたちと接している場面を、できる限り、具体的に描いてもらう。そこで出てきたキーワードを、もし議論の場にホワイトボードなり黒板なりがあれば、そこに、対比しながら記していくと、わたしたちが、日常の実践のなかで、どういう具体的な行動、発言、発想法にリーダーシップという言葉を連想しているか、対照的な姿がある程度、具体的に把握できる。

行政学では、法律による行政という考え方を学ぶが、こちらは、きちんとしていないと困るという部分、どちらかというと行政組織の管理(マネジメント)の側面を照射する。しかし、変革が求められるのは、産業社会の企業のような組織ばかりではない。『地方を元気にする、自治体経営を変える改善運動』というこの書籍のタイトルにあるように、実際に自治体でそのような運動に従事されてきた異なる6自治体の職員の経験を、自治体改善マネジメント研究会代表の元吉さんがまとめられたこの著作では、行政組織に求められている変革とリーダーシップのあり方が述べられている。自治体に限らず、企業や他の組織体における組織変革や組織開発、経営改善について、その理解を深めたい実践家と研究者の双方にお読みいただきたい。

2015/06/12

美濃加茂市 建設水道部 土木課 課長補佐兼総務係長山口 登督(たかまさ)

こうあったらいいな!という内容が満載です。
でも、「思い」だけでは意味を為しません。実行・行動につなげましょう!

現状に違和感を持ち、企画、総務、人事などで行政経営に携わったことがある方なら
「人」が全てと必ず気づくと思います。

ところが言葉遊びが得意な行政(要は破たん、倒産が事実上ないため、覚悟が足らない・・・自分を含め)にとって「行(財)政改革」という言葉は自分が行政に入る随分前から定期、不定期に計画が作られ、実行する「人」にスポットをあてることなく進められ、内容すら達成されたかの分析、検証もあいまいなまま、また新たな改革がスタートしています。 「計画」をつくればそれで終わりといった風潮により、PDCAサイクルが十分に回ることがない行政において、言葉遊びが絶えないのも無理がありません。

なら、どうするか!を気付かせてくれる一冊です。

事務分掌として担当するだけの職員にとって法的縛りのない行革は、トップや上司の顔色を伺うだけで、総合計画や行革、そしてカイゼン運動の進捗管理をしてるだけで仕事をしてる気になっています。最終的視点が「自分」なんですね。

一方で、熱意ある担当職員は、住民視点、納税者視点、企業視点など「社会的視点」の重要性と「行政の役割」を考え、最大の経営資源である“職員”にスポットを当て組織力を高める手立てを考えます。 こんな職員がいる自治体は小さくても未来が見える幸せな自治体であるとともに、活動をフォローできるトップ、上司、仲間のいる組織風土の熟成が「民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障すること」(「地方自治法第1条目的」抜粋)を達成する組織としてスパイラルアップさせ、働く職員の「やる気」を引き出してワークライフを充実させてくれるのではないでしょうか。

他自治体の担当者自らがペンを持って書かれた内容は評論家とは違う視点で書かれています。
本書は組織風土改革を柱とする自分にとって本書は自分の思いの代弁とも言える内容です。

地方創生を進める中、「自治体経営を変える改善運動」(自治体改善マネジメント研究会代表 スコラ・コンサルト株式会社 元吉由紀子 編著 「東洋経済」)が公私とも熱い全国の同志の拠り所となり、気付きを与えてくれる一冊であることをお伝えして感想とさせていただきます。

2015/06/11

人吉市 総務部 総務課長溝口 尚也

「この本はきっと貴方のかゆいところに手が届くはず」

自治体職員が「貴方の組織に改革改善は必要ですか?」と尋ねられたら、おそらく十中八九の方は「必要」と答えられることでしょう。
「では、貴方は何か改革改善をやってますか?」と尋ねられて、胸を張って「やってます!」と答えられる人は、おそらくほとんどおられないのではないでしょうか。
もし、おられるとしたら、その方にはこの本は必要はありません。

大半の方は、途端に歯切れ悪くなったり、あるいはムッとして押し黙ってしまう。
または、自分がやることではないからと「問い」をかわしてしまう・・のではないかと思います。

ただ、そんな貴方でも、もし・・・。 これでよいのか?このままでいいのか?
何とか変えたい。変わりたい。
では、何をどうすればいいの?どうあればいいの?それがわからない。
ムズムズ、モンモン、イライラする・・のであれば。 それは貴方が、「傍観者」から「当事者」になろうとされている証拠ではないかと。
素直な心の反応ではないかと思われます。

そんな貴方への「処方箋」として、私は、この本をおススメします。

実は、私も今、とてもかゆいのです。 環境が変わったからなのか。
自分の体質が変わったからなのか。
わからないけれど、ムズムズ、モンモンと、もどかしい。
けれども、五十肩の影響か、本当にかゆいところに手が届きません。
やれやれと困りはてていた矢先。この本が手元にありました。

今では、この本を孫の手のようにそば近くに置き、たびたびページを開いては、 かゆいところを掻いてやらないとおかしくなりそうです。
そんな私だからこそ断言します。

この本は、きっと貴方のかゆいところに手が届くはずです。

なぜならば、この本には理論やお題目はありません。
実践を通じてしか得られない成功例や失敗例。そこから生まれた知見や知恵、ノウハウ。
そして、なにより。代表著者の元吉氏をはじめ執筆者のみなさん方が積み上げてこられた実践の中からしか感じとることができない生の感情や思いがたくさん詰まっています。

それらを自分たちに当てはめていくと、 今、何が課題問題なのか?
今、自分たちはどの段階にいるのか? 改革改善をすすめるプロセスにそって、自分たちの立ち位置がどこなのか? が、とてもわかりやすく見えてきて、そして、ストンと腑に落ちる。

また、それをすぐにたぐりよせられるように、各章の小見出しも見やすく、わかりやすく。 さらには、ページ上方の見やすい位置に、それぞれの段落のリードコメントがついています。
だから、「あ、ここだな!」とかゆいところにすぐにたどり着く。
そんな工夫もされています。
なので。 この本は、そもそも自分のかゆいところがどこかわからないという方に、特におススメです。
「あ、ここだ・・」とヒットしたときの得も言われぬ快感。
その効用は、読んでみなければわからない。
この続きは実際に手にとられ、ページを開いてみてのお楽しみということで。

2015/05/24

神戸市 行政経営課中道 眞

元吉さんの新著、「地方が元気になる 自治体経営を変える改善運動」ですが、まず表紙が良いですね。
思わず手に取ってみたくなります。 もしかしたら、心地よい表紙から興味を持って読んでみようと思う職員もいるかもと思って、職場のデスクに、人の目につくように常に表紙を上にして置いています。(笑)

「公務員」という立場は、きちんとできて当たり前。
もしひとたび何か問題が起こればマスコミ、議会、市民からバッシングの嵐。
だから、コンプライアンスの徹底が求められ、その行動様式は、目の前にあることを言われたとおりにきっちりとこなすことになりがちです。
特に、当市の場合は、阪神淡路大震災以降の復興の取り組みの中でそれらの風当たりがより強かったということと、財政健全化するための取り組みを20年間続けてきた中で基本的に削減・縮小といった方向で行動せざるを得なかったことから、結果として個々の職員が、自律的に考え、行動するということができにくくなっているように感じます。

でも、個々の職員は、私を含めて、本来は地域のために貢献したいという「熱い想い」を秘めているはずです。
その潜在的に持っている想いを、カイゼン運動を通じて顕在化させることができれば、働く私たち職員自身にとっても、限られた人的資源の中で市民サービスを向上させるために効率的に業務を行うことが求められる組織にとっても、そして何よりもサービスを受ける市民にとっても、HAPPYなことだと思います。

この本は、読んだらカイゼンの取り組みに取り掛かりたくなるのではないでしょうか。
カイゼンという高度に知的な楽しみを、じわじわと浸透させるための仕掛けをどうすればよいか、紹介していただいた先行する他都市の事例を参考に考えたいと思います。
それぞれの事例は、当事者の筆によるだけに臨場感と説得力がありました。すべてが順風ではなく、今も試行錯誤の中で取り組んでいるということに、リアリティを感じました。

他都市での取り組みを大手を振ってパクりあう(笑)。むしろどうぞ参考にしてくださいという姿勢で共有しあうことができる。
これは、「公務員」であることの強みだと思います。
その強みをいかして、当市においても、試行錯誤しながら神戸らしいスタイルを作り上げていく必要があると考えています。
いつの日か、カイゼンサミットや、全国改善改革実践事例発表会に、当市からも自信をもって参加できるように、まずは種まきをしていきたいな、と思っています。

素晴らしい本を、素晴らしいタイミングで届けていただき、ありがとうございました。
この本が、自治体の幹部を含めた多くの職員の手に渡り、改善運動が、爆発的に浸透するきっかけになることを祈っております。

2015/05/01

合同会社経営合宿研究所 代表社員(株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー)森田 元

少子高齢化が進む中にあって、地方行政の効率化とそれを支える地方自治体の 活性化は益々重要になっている。しかし、「お役所を変える」のはそう簡単では ない。

長く公共性の高い事業を行う企業で働いてきた私は、公共サービスに携わっている という高邁な使命感が、市民感覚から遊離する遠因になっていたり、また国の方針 通りやっていれば最後は国が面倒みてくれるだろうという親方日の丸的潜在意識が 改革を困難にしていることを感じてきた。

本書は、そういう難しい構造のなかで、どのように改善に取り組んでいけば よいのかを、実際に取り組んでいる事例紹介を交えつつ、たいへん実践的な ノウハウが得られるように解説している良書である。

本書を読んで、改革と改善の違いについても、改めて考えさせられた。 大胆な改革というのは、ハード的な施策が中心になるが、ハード的改革は、 メンテナンスをしっかりやって行かないと本当の意味で定着しない。
そう考えてみると、改革を定着させるには、改善がしっかりやれる組織風土 になっていることは、ある意味必須要件であるとも言える。

本書は、国政、地方行政のみならず、公共性の強い事業に携わっている方々にも お勧めしたい「使える本」である。

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