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行政経営デザインメールニュース 2020年09月

新たな都市経営に向けたオフサイトミーティングの活用

こんにちは。
私は建築技師です。10年前、人口減少社会に備えるため行政改革の担当課長として、市長公室に配属されました。

本を読み始めたのはこの頃です。身に付けた知識で考えた改革案を関係部署に持ちかけても、ほぼ相手にされません。改革は、知識や 理屈じゃない、組織風土から変える必要がある、と痛感していたと ころ、スコラ・コンサルトの柴田さんの本をみつけ、オフサイトミー ティング(以下「OSM」)を知りました。

先日開催された「公務員のオフサイトミーティング場づくり応援セ ミナー」では、その後取り組んだオフサイトミーティングの活用経験から主な3パターンの事例をお話させていただきました。

■課長有志で始めた自主研究グループ

まず初めに本を読んですぐ、仲良しで改革派の課長4人に、一人につき最大5時間かけて、管理職が先頭に立って組織風土改革を進め るべき、と熱い思いを伝え、自主研究グループを立ち上げました。その後、私たちの呼びかけに賛同する職員50人を集めて講演会を開 き、我流オフサイトミーティングを始めて、約2年半続けました。

最初は、気楽に、でも、真面目な話で盛り上がっていました。しか し、雑談から一向に発展しません。成果らしきものが出ず、流石に焦り始めた頃には、参加者も減っていきました。熱い思いがある人は集まりますが、自分の仕事に関係のない都市ブランドとか観光振 興など、さして知識がなくても話ができてしまう気楽な評論家向き のテーマに人気が集まるものの、 仮に自らの業務の改善を提案する人がいても、誰も関わりたくないのか、議論を深堀りしようとはし ないのです。 「目的なく集まって話しても、うまく行かない。」 それが私の or 中心メンバーの感想でした。

■都市を再構築するうえでの二つの組織課題

7年前、都市計画課長になり、改正法により新設された都市のコン パクト化を目指す立地適正化計画の策定に着手しました。市長公室 で市長の視点から役所全体を見た過去の経験と、地方都市が生き残 るには、市民の年収向上が最大で最終の目標であるという信念を持ったこと、そして、雑食性の知識の蓄積から、市場原理により都市を コンパクト化しつつ経済効率の高い都市に再構築するという目標を設定しました。そのため、都市工学的視点を捨て、経済学的な視点 に立った独自の計画を構築することにしました。
そして、相乗効果を高めるため、中心市街地活性化に必要な規制緩 和とそれによる弊害を防ぐ建築物等の高さ制限などなど、2025年までに順次、立案実施していくべき施策を決めました。

ところが、これを実現するためには、大きく2つの組織課題があり ました。1つ目は、職員に必要な知識がないこと。そして、2つ目は、関連する部署が膨大にあることです。

■職員の能力を引き出し、高め合う課の「経営者会議」

まず1つ目の課題は、職員のほとんどが土木建築技師で、経済や経 営などの知識が多くはありません。行政改革で思い知りましたが、 必要な知識がなければ、いくら高い目標を掲げても誰もついてこら れず画餅に終わります。 そこで、これまで7年間、私が選定した関連情報を毎日回覧して職員の知識を向上し、課長の理念や考え方を伝え、育ててきました。

・日経新聞の記事で時代の流れが読める部分に赤線を引き説明を加 えたもの
・手持ちの書籍の中から、職員個人の好みで選べるよう種類の違うものを3冊厳選し、4ページずつ計12ページ分、日頃から職員に  説明していることが書かれている部分に赤線を引き、説明を加えたもの。

人は同じ言葉を繰り返し口にしていると、潜在意識にしっかりと定着し行動につながっていくアファメーションという心理学的手法が あります。このアプローチを活用して、経営系の書籍に頻出する言 葉で作った「TEAM都市計画課7つの目標」を朝礼で唱和してきま した。

この目標を共有したうえで、職員一人ひとりの強みを職員同士で評価し合い、各自が担当している業務を他の職員の強みに生かせるユ ニットに分割して交換し合うことにより、チーム全体の成果につな げる「経営者会議」を課内全員で毎週火曜日1時間開催しています。 先進国と発展途上国が相対的な強みを生かして貿易を行うことによ り、双方が豊かになるのと同じだと説明しています。それぞれが強 みを生かしてチームに貢献することは、達成感と成長感、自己重要 感を持つことに繋がります。また、互いの弱みを打ち消し合い、安 心と信頼にも繋がります。この経営者会議は、通常の業務管理に終 わりがちな課会に、OSMの要素を加えた拡大増強版の課会と言える ものです。

また、この課内経営者会議の補助輪として、次長(係長)も先輩も 後輩も加わって、皆がフラットなプロジェクトメンバーとなり、ホ ワイトボードにマインドマップを改良したオリジナルの板書を使ってアイデア出しのOSMを行います。

さらに、上記のように議論を深めるだけでなく、自分たちの働き方 改革にも挑戦しています。EXCELシートに一ヶ月と一年の残業時間 を回帰分析により推計し、お互いの予想残業時間を見ながら、残業 時間の削減と平準化に加え、月1回の年休取得の実現もできるよう 運営しています。

■部署横断した検討委員会から派生した「特別委員会」で本音議論

次に2つ目の課題となった関連する部署が膨大にあることについて です。この状況を逆手にとった効果的な会議としてOSMを活用して 行った事例をご紹介します。

通常、施策を作る時はその都度、要項をつくり委員会を立ち上げ、 関係がありそうな部署を集めます。しかし、実際の会議は一部の委 員が発言するだけの生産性のない、形式を重視した会議を繰り返し、 皆の時間を浪費しながら、横連携の得られない施策を生産している ものが多いと感じます。
そこで、両副市長を委員長に据え、全体の約3割に当たる約80名の 局部課長で構成する検討委員会を立ち上げました。委員会では、各 取組みの概要を説明し、必要最小限の課長で組織する「特別分科会」 の設立承認を受け、結果を検討委員会で報告する仕組みとしました。 そして、特別分科会の進行においては、途中メンバーの中でもテー マに高い課題意識を持つ課長だけを集め、膝突き合わせ、前述のオ リジナルの板書をしながら本音を言い合うOSMをします。

このOSMは、特別分科会を補助する会合となっています。これによ り課題が明確化され、共感と共有ができ、一体感と協力関係が生ま れていきます。その結果、特別分科会では、既に協力関係の得られ た課長どうしの援護射撃により会議は活性化し、同時に横連携が強 固に構築されたものとなってきます。 特別委員会による提案が、本音で課題議論され、課長どうしが協力 し合える関係性も裏打ちされたものになっていれば、当然経営幹部 が勢揃いした検討委員会でも了承され、組織としても認知された取 組みになることは、言うまでもありません。

今日では、都市再生にあたり官民連携で取り組むことが増えてきま した。OSMの活用は、これらの場でなお有効な手段だと実感してい ます。まだまだご紹介したいことは沢山ありますが、今回はここま でにいたします。OSMが活きる場面と成功の鍵は、課題の共感と共 有、仕事の本質の追求と目標の明確化にあると思います。 是非、お試しを(^^)!そして、よりよいまちに近づけていきましょ う。

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