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行政経営デザインメールニュース 2021年10月

行政評価の改善に向けて(2)

私が厚生労働省の行政事業レビューに外部有識者として参画するの は、今年で3回目となります。2020年度は新型コロナウイルスの影響で中止になり、今年はWEBで開催されました。そのため、公開レビ ューでは事前の施設見学ができず残念でしたが、省のみなさんには、コロナ禍でご多忙中にもかかわらずご対応いただいたことに頭が下 がります。
コロナ禍だからと言って通常の事業をやらずにすませるわけにはい きません。その中で外部評価を含めた行政評価のプロセスが、PDCA サイクルの一つとして当たり前にやる仕事になっていることを改め て認識することができました。

ただし、5月から4ケ月に渡って取り組んで来た講評を、最後に政 務官へお伝えする折、ある委員の方からかつての行政評価に比べると省の取り組みに前向きさが薄れてしまったのではないかとの指摘 がありました。私は、公開レビューにはまだ2回しか経験していないため、過去と比較をすることはできかねます。それでも2019年の レビュー後にこのコラムに書いたポイント(事業の優先度と関連事業のとらえ方について)が未だ改善されていない状況を見るにつけ、ある程度推測がつく気もいたします。

▼2019年のコラム「行政評価の改善に向けて」
http://gyousei-design.jp/column/2019/09/post-111.php


今回のレビューでは、さらに2つ気になる点がありました。

一つは、全国展開する事業の指標についてです。 国が実施して全国へ展開する事業においては、地方自治体を介して取り組むものが多くあります。そのため、成果指標や活動指標とし ては、おのずと全国の自治体数や施設数となるわけです。しかし、これが事業開始から何年経過してもなお同様に総数で管理されていることに違和感を覚えました。評価欄には、「概ね見込んだ通りである」と記されています。しかし、本当に問題はないのでしょうか。

そこで、自治体の職員や関係者に事業について伺ってみると、確か に形式的には実施されているものの、その運用状況には問題があり、 要改善との意見が聞こえてきます。すなわち、地方分権が進んだ今 では、国が事業を企画しても、地方が一律にそれを実施するとは限 らず、その実施方法は地方によって大きく異なっていて、浸透度に 差があることを表しています。それゆえ、総数だけでなく、実施の 質を見分ける指標を設定して、地方における進捗の違いを把握し、 管理していく必要があるのだと思います。

もう一つは、事業終了時の評価のあり方についてです。 今回40件ほど担当した書面レビューの中には、コロナ禍の対策とし て期間限定で実施された事業やシステムの整備事業など、今年度で 終了する事業が幾つか含まれていました。その事業レビューシート を見ると、改善の方向性の欄には「予定通り終了」とだけ記されて いるものがあります。
確かに事業は予算がなくなれば終了します。しかし、緊急時の対応 で事業予測が充分しきれなかったために予算の執行率が大きく下回 った経緯があるものや、終了後に通常業務の中で運用していくもの などがあるとすれば、次の危機に直面して発生するだろう別の事業 企画や、その後の運用を定着させるうえで留意する点などを「改善 の方向性」に記録しておくほうがよいでしょう。

担当者にとっては、終了した事業のレビューシートを書くことには、 なかなか意義を見出しにくいのかもしれません。それでも、外部有 識者がこの事業レビューシートを見て、さらに事務局が外部有識者 と事業課との間を何往復もしてコメントの調整を図るにあたっては それなりの労力をかけています。それは、単に事業単体の単年度の 執行を評価するためではなく、広く政策目標の達成に向けて「政策 推進システム」全体を意義ある取組にしていくねらいがあるからだ と思います。
誰のため、何のための行政事業レビューか、常に時代に応じた意義 を職員が感じ取り、やりがいを持って取り組めるよう、行政評価に 関する教育を再度徹底していく必要がありそうです。これは、地方 自治体の行政評価にもそのまま当てはまることではないでしょうか。

行政経営デザイナー/プロセスデザイナー 元吉 由紀子

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