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公共組織支援メールニュース 2009年03月

「発表会のための改善 VS 自発的に取り組む改善」

 まるで「改善」という重い荷物を背負っているかのような雰囲気を漂わせているCチーム。「職場チーム改善セミナー」の1回目に参加したある自治体のチームの様子です。
 この「職場チーム改善セミナー」は、私どもスコラ・コンサルトが提供している研修プログラムです。部や課などの職場単位でチームをつくり、チームでの話し合いを通じて課題設定から問題解決まで一連の改善プロセスを実践していく内容で、3回を1セットとして実施しています。


 このCチームでは、区役所を一つの職場として捉え、各課から選ばれた改善担当者でチームを構成していました。この自治体では改善活動が活発に行なわれており、毎年、年度末に活動の事例を発表する場を持っています。しかし、いつの間にか「事例発表会に出るために改善をする」という雰囲気があり、職員の中には負担感とやらされ感を感じる人が出始めていました。この状態に、改善担当者も頭を悩ませていたのです。やらされるのではなく、職員が自発的に取り組める改善活動にしたいという思いは持っていましたが、担当者である以上、発表会を目指さなければならないというプレッシャーも抱えていました。「発表会のための改善」と「自発的に取り組む改善」の板挟み状態にあったと言えるでしょう。


 Cチームの様子を見ていると、このままでは改善担当者という責任感から結果的に「発表会のための改善活動」になってしまうのではないか、と思われました。そこで、改善活動の本来の目的を考えるために、「本当に発表会を目指して改善をしないといけないのですか」と質問を投げかけてみたのです。しかし、前述のような背景があるからでしょう、なかなか明確な発言は出てきません。そこでより具体的に自分たちにとってどちらが大切なのかを選びやすくなるように「発表会に出すための立派な改善をめざしますか。それとも、職員の自発性を大切にした活動をして、その結果から発表会に出るか決める、という選択をしますか」と質問を言い換えてみましたが、Cチームの皆さんから悩みが消える様子はありませんでした。


 そこで、今度はチームリーダーである総務課の課長代理に向けて同じ問いを投げかけてみました。チームメンバーが感じている重いプレッシャーを除くには、リーダーの意思がキーになると思ったからです。その課長代理は、少し考えた後に「上司(課長)に聞いてみますが、おそらく発表会をめざした改善でなくてもいいと思いますよ」と話してくれました。
 このリーダーの言葉は、案の定、チームの皆さんの「重い荷物」を下ろす効果を発揮しました。「小さくてもやってよかったと思えるような活動をしたい」「当たり前のことを当たり前にやろう」など、それぞれが自分の言葉でどんな改善がしたいのかを口にするようになりました。その中から、これまでは「一部の職員だけが肩に力を入れてやっていた」、これからは「肩の力を抜いてみんなで遊び心をもってやれるところからやろう」という、活動のコンセプトが明確になっていったのです。
 こうして議論を進めていくにつれて、改善アイデアが少しずつ浮かび、発言をメモしていたホワイトボードは、いつの間にか22個の改善案で埋まりました。そして話し合いの最後に、このチームが決めたことは次のような内容でした。


・今日考えた改善活動のあり方を、職場の皆へ情報発信する
・改善案はこの場で決めるのではなく職場に持ち帰り、皆にアンケートをする


 職場に持ち帰って「やらせる」ことをしたくない、他の職員の意見も聞きたい、一緒に改善案を考えてもらいたい、その思いからこのような結論を出して話し合いを終えたのです。
 セミナーの2回目は、2カ月後でした。2回目の話し合いの場では、1回目とは見違えるほど明るく和気あいあいとした雰囲気で、一体感が見えました。2カ月の間に何があったのでしょうか。「発表会に出る」というプレッシャーがなくなったことで、情報発信に向けてチームで話し合いを続けることができたこと、また、その話し合いを通じてお互いに得意分野がわかり、協力して活動に取り組めるようになったことを、メンバーが楽しそうに話してくれました。


 改善活動の進め方について、Cチームと同様な悩みを抱えている自治体も多いと思います。「誰のための改善活動なのか、何のためにやるのか」を考えることは、活動の原点ではないでしょうか。本来、改善活動とは、一人ひとりが自分にとって取り組んだ意味があり、達成感につながってこそ、やり続けることができるのです。やりがいのある取り組みに向けて一歩を踏み出せる人が増えるように私たちはサポートをしていきたいと考えています。
 

プロセスデザイナー 今井達也

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