Column コラム
公共組織支援メールニュース 2009年05月
サービス業としての職場風土づくりのための研修活用
バブル経済崩壊後、民間のサービス業では、お客様満足を獲得できなければ熾烈な競争環境で生き残っていけない時代に突入し、そのために必死の努力を積み重ねてきました。その結果、顧客や利用者の目は肥え、従来は許容されていたレベルでも、苦情が寄せられ、さらなる改善が求められるようになってきています。
行政組織においても、市民サービス向上のための応対力やCS(お客様満足)向上の必要性が叫ばれ、さまざまな取組みがなされ始めました。職員の意識や行動を変えるためには、「まず、研修」と当然のように考えられています。問題は、誰に対して、どのような研修を行なえば、本当にお客様に満足していただけるサービスを提供できるようになるのか、という点です。
「サービス=接遇」だから、まずは「接遇研修」だ。一般的に行なわれるのは、現場の職員を対象に、「形」からやスキルをマスターしようという取組みでしょう。このタイプの研修は、受講直後は盛り上がりを見せたとしても、なかなか定着しない例を多く見かけます。そもそも「なぜやらなければならないか」ということが納得されていなかったり、価値観として共有されていないところでは、やってもやらなくても、それで給料や評価が変わるわけではない、と考える人が必ず出てくるのが行政組織の悩みともなっています。
そこで、民間の事例や文献から知識として理解する、「CSマインド研修」で意識改革を求めたり、現場で率先して行動してもらう人を各職場で選んで、「CS推進リーダー研修」などが行なわれたりします。しかし、この場合も、頭ではわかっても職場はそんな雰囲気ではない、特に何の支援も評価もなく、下手をするとリーダーだけが空回りしているという状態に陥ったりするのです。
率先して問題解決に当たり、周囲に働きかけて巻き込んでいってくれるようなリーダーを本格的に増やしてためには、職場の管理職が日常の業務マネジメントや職場の状況を通して働きかけていかなければなりません。それには、課長層以上を対象とした「CSマネジメント研修」が必要になってきます。行政組織では、部課長は既に研修受講の対象外と考えられている場合があったり、一般的な階層別の研修に留まっていることがあるようですが、この層のリーダーシップの発揮なくして、職場のCS風土が構築されるということは望めないでしょう。
CSについて語る「真実の瞬間」という言葉がありますが、サービスは財(製品)と異なり、消費される瞬間がすべての価値を決めます。だからこそ、お客様と接する部分だけではなく、すべての組織の各業務がその「瞬間」を最高のものにするために繋がっていないといけない、ということが言えます。こう考えてみると、CS向上を目的とした研修のあり方や内容も、CS品質を高める職場風土づくりをめざしたものに変えていく必要がある、ということになるでしょう。
次回は、研修と職場ミーティングを併用して、CS推進に取り組んだ事例をご紹介したいと思います。
プロセスデザイナー 宮入小夜子