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公共組織支援メールニュース 2009年08月

「部下とは話をしています」~何を話し、何を聴いていますか?

 「本庁と仕事のやりとりをするなかで“いつまでに、何をやるか”をうまく聞けないために優先順位がつかず、仕事が増えているんだよな」と、部下の仕事のし方に問題意識を持つAさん。このAさんは「人材育成」をテーマにマネジメント層を対象とした研修の受講者です。当社は、この研修の支援をしていました。


 Aさんは本庁から離れた地域組織、いわゆる「出先」の課長で、部下は4人。部下とは定期的にミーティングをやっており、「部下との意思疎通はできていて、関係性も良好ですよ」と話されていました。しかし、さらに詳しく話を聴いてみると、Aさんは部下の仕事のし方の問題点は指摘していましたが、それに対してAさん自身がその問題にどう向き合い、部下の困っていることを助け、支えようとしているのかは、なかなか見えてきませんでした。


 私はAさんに、「Aさんが感じられている問題意識を、部下の方へ伝えていますか?」と質問すると、Aさんは「伝えていません」と答えました。
 そこで今度は、部下の視点からAさんの抱いた問題意識を考えてみてもらいました。「部下が本庁とうまくやりとりできないのは、何か理由があるはず。その理由は何だろうか」
 この問いを、Aさん含め皆が考えはじめました。
 すると、「本庁の担当者と関係性があまりできておらず、顔が見えない中でやり取りしているので本音の話ができないのではないか」「そもそも本庁と地方で上下関係が存在するように思う」などの意見が出てきました。
 これらの話し合いからAさんは「まずは自分の問題意識を部下に話さないと、問題を解決することはできないのかもしれないですね」と、部下とのミーティングの場で「まず部下の話をじっくり聴く」ことをやってみることにしたのです。


 役職者の方からは「部下と話してますよ、定期的に打ち合わせもしていますし」という声は多く聞きます。しかし、部下と何をどんなふうに話しているのか、いちどふり返ってみてはいかがでしょうか。業務を遂行する責任感から、上司も部下も、互いに話している内容が業務や仕事上の報告、連絡がほとんどになっている場合がよくあると思います。
 しかし、それだけでは、本当に話し合わなくてはならないことはなかなか見えてこないものです。Aさんのように、自分の問題意識やその背景を話すこと、部下が困っていることを聴いてみることから、その奥に潜んでいる目に見えない問題、本質的な問題が見えてくるのです。
 「何かおかしい」という、問題として上司に話すには躊躇してしまうような意識をそのままにせず、部下が口に出せる環境をつくること。「なぜおかしいと感じるのか? そもそも何のための仕事だったのか?」といったことを、上司と部下で対話を通じて互いに聴き、考え、深めていく。これらは、部下を支援していくうえで、上司の大切な役割だと思います。問題を解決するために、まず問題意識を部下と共有し、一緒になって考えていく対話のプロセスが、問題の顕在化や解決につながっていくのです。


 業務効率が叫ばれている昨今、部下の悩みや問題意識を聴く時間をとることはなかなか難しい、という方も多いでしょう。しかし、話し合うことで本質的な問題が顕在化し、問題を解決する糸口を部下と一緒に見出すことにつながっていきます。問題が解決しない、と悩んでいる方は、部下の話をじっくり聴く、自分の問題意識を話してみる、そんな時間をとることが解決への近道なのかもしれません。

 

プロセスデザイナー 今井達也

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