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公共組織支援メールニュース 2010年07月

"住民参画"による町づくりの第一歩

 昨年秋に日本を揺るがす政権交代があったが、その後も揺れはおさまらず、今なお揺れ動いていることが今回の参議院議員選挙の結果からも明らかになった。そんな中で、地方は揺れがおさまるのを待っているわけにはいかない状況にある。直面する課題が山積みし、それらの解決を図るためには、地域の課題を地域で解決する自立に向けた歩みを一歩ずつでも進めていかなければいけないからである。


 先日、三重県南伊勢町の町政刷新委員会に参加させていただいた。この町は、人口が16,000人と小規模で、県内で最も少子高齢化が進
み、財政力もワースト2の低い状況にある。
 昨年秋に初当選した小山巧町長は、この町の将来を築いていくためには、役場でできることには限界があると考え、これまでのように町民が役場に要求して、役場にやってもらう構図ではなく、町民一人ひとりが町の主役としての意識を持ち、みずからができることをみつけてやっていく、役場はそのための支援をする役割にあると、選挙戦のときから訴えてきた。そして、町民とともに進めていく町づくりを最優先すべく、マニフェストの最初に“町政刷新”を掲げていた。
 町政刷新委員会は、その町政刷新の取組みの一つであり、町内の各種団体代表者のほか公募委員と外部委員から構成されている。


 “住民参画”というと、今では自治基本条例や総合計画の策定のためのワークショップ、各種イベントでの協力・協賛、町づくり協議会の設置・運営など、いくつもの場面や手法が展開されるようになった。
 しかし、小山町長が目指す“住民参画”のあり方は少し異なる。高齢者が健康診断など町の健康予防事業や介護予防事業に参加し続けて健康維持に努めることによって、独り暮らしでも自分でそれなりに家事をこなし、病院で長患いをすることなく元気で暮らしていることも町づくりに参画することと考えている。それが、高齢者がいきいきと元気に暮らす町、医療費負担を削減する健康な町づくりにつながっているからだ。また、隣近所の絆を大切に、笑顔で声をかけあって暮らしていることは、防犯防災に備えた安全安心な町づくりを支えている。


 大切なことは、「何をするのか」ではなく「誰がするのか」ということにあるのだと思う。住民参画のベースに、「住民一人ひとりが主役」であるという町づくりの理念があること。一人ひとりが自分のことを自分でできるようになろうと努力すること自体が、地域の抱える問題を分かち合い、その重さを軽くしていくことになる。そして、住民がみずから行動し、それが自分にとって有意義だと感じられること、そしてそのような行動をずっと続けていきたいと思うようになると、そのことが町づくりの原動力になっていく。
 この「住民一人ひとりが主役である」という原動力を町づくりにつなげていくには、そういった住民の行動を支え促進する環境づくりや、一緒に取り組む人のつながりを地域の中につくっていくことが、役所の役割として重要になってくる。


 私はこれまで企業や行政組織に関わりながら、そのサービスのあり方や、仕事のやり方を変える組織づくりのお手伝いをしてきた。しかし、よりよくしたいとの思いを持った人が行動を起こし、同じ思いを持つ人と出会いながら、その輪を大きくしていくプロセスは、町づくりにも通用するところがあるのだと思う。
 南伊勢町のような町は、きっと日本中のあちこちにあるはずだ。だからこそ、日本が必ず直面する深刻な課題に先行して取り組まなければならない状況にあるこの町が、これからどのように町づくりを進めていくのかに注目している。今、南伊勢町で起きていることは決して他人事ではなく、いずれ誰にとっても、どの地域においても重要な課題となり得るものだと認識すれば、これらの取組みから学ぶことは沢山あるだろう。町政刷新委員会は、秋までに計5回の開催を予定しているので、ぜひまたの機会に続編をお届けしてみたい。
 

プロセスデザイナー 元吉由紀子

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