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公共組織支援メールニュース 2011年02月

定年退職後の地域デビュー ~人間力で地域を支える存在に~

 昭和22~24年生まれのいわゆる「団塊の世代」の大量退職が、本格的に始まっています。企業の現場では彼らの知恵をいかに次世代に伝えるかが大きな問題になっていますが、地域ではいかに受け入れるかが問題になっているようです。
 「団塊の世代」に対してはいろいろな評価がありますが、定年を迎えてもまだまだ労働意欲がある人、そして社会貢献に対する関心が高い人も多いようです。退職を機に、それまでできなかった地域への奉仕活動に余生を捧げたいと情熱を燃やす人も少なくありません。


 しかし、勤め人時代にほとんど地域での交流がなかった人にとって、退職後に地域に溶け込み貢献していくことは、実は容易ではありません。地域の活動では70代以上の先輩が活躍していることも多く、定年退職者の年齢はまだまだ「若造」であったりします。一方で定年退職者にとっては、会社では役職を持ちバリバリ仕事をしていた自負があり、「地域社会一年生」という立ち位置にとまどい、なじむことができない人も多いのです。
 また、地域へ溶け込むハードルを高くしているもう一つの要因として、会社の活動と地域の活動との組織運営の違いがあるように思います。会社では、上司からの指示・命令を受けて部下が行動する「タテ(上司と部下)の関係」が一般的なのに対して、地域では、メンバーそれぞれが主体的に参加する「ヨコ(個人と個人)の関係」を基本とした活動が多いからです。


 地域における活動では、メンバーが対等に関わり合うヨコの関係を大事にするのはいいのですが、その反面、互いに遠慮し、気を遣いあい、結局誰も責任をもたず、迅速な判断ができないという運営面での不具合も起こりがちです。指揮・命令系統がはっきりしたタテ関係の組織に慣れた人には、それが歯がゆくて、ついつい組織運営に口出ししてしまいます。「自分は組織の生産性を高めるカイゼンのプロだったんだ」という自負と、それを支える実務能力をもって、仲間のために貢献しようと頑張ります。しかし、この行動は個々の主体性を大切にする組織の合意形成プロセスの中では支持されず、空振りに終わってしまう場合が多いようです。ふとまわりを見渡してみると、いつのまにか、みんなが自分から離れてしまっていることに気づきます。定年後にやっとの思いで見つけた自分の居場所を自分で壊してしまっているのです。


 地域での活動を円滑に進めるためには、ある場面では指導する立場に立つ人が、別の場面では他の人の指示に従う役回りをする、そういった相互に信頼し合い、柔軟に協力し合っていく関係が望ましいのです。
 地域には多種多様な組織が存在し、さまざまに利害関係が絡み合っていることがあります。そういう中で人と人が関係を良好に保っていくためには、単に役職という「タテの関係」の強制力に頼るのではなく、人間力で組織をまとめる人の存在が欠かせません。そういった人を私の故郷では「長老」と呼んでいました。家督は息子に譲って口出しせず、自分は幼い子供たちの情操教育を担い、地域の伝統行事では仕切り役となり、そして、いざという時に頼られる知恵袋的存在として地域を支えていたのです。


 この「長老」のような機能を地域の中に復活させること、それが人と人とのつながりを強め、地域の活動を活性化させるキーになるのではないでしょうか。その新しい担い手となり得るのが、定年退職者の方々です。会社生活で培った多くの知識と経験や知恵を一方的に押しつけるのではなく、まわりの人の能力を引き出すことに使うことで、彼らは地域を支える存在になれると思うのです。
 それには、前述したような地域の入り口にある障害を乗り越え、定年退職者が地域デビューをしていくために、第一歩として「真剣に相手の話を聴き、自分の本音を話せる場」を地域の中につくっていくことをおすすめします。場の中で受け入れられる安心感を味わい、自分の居場所が定まること、それが人を信頼し受け入れ、地域を支えていく存在になるための心の土壌をつくることになります。


 定年退職後の居場所を、年金生活者という「地域から支援される立場」に置くのか、「地域を支援する立場」に置くのか、それは個人の自由です。しかし、自分にとってどちらが本当に心地よいのか、それについて真剣に考える機会を提供することは、社会の責任ではないでしょうか。
 私自身は、「真剣に相手の話を聴き、自分の本音を話せる場」を地域につくるところから始めてみたいと思っています。

 

プロセスデザイナー・東條茂樹

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