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公共組織支援メールニュース 2011年11月

首長ビジョンが職員の行動にどうつながるのか

 先月に引き続き、第25回自治体学会大会のパネルディスカッション、「地域分権時代の行政組織の変革とリーダーシップ~行政組織(役所)風土と職員意識改革の実現を目指して~」の詳細をご報告いたします。
 私・宮入小夜子からは、南伊勢町で昨年に引き続き、行政職員全員を対象として実施した「行政組織の変革に関する調査」結果を比較し、分析した内容を発表しました。これに関連して、パネラーの小山町長からは就任後2年間の取組み報告を、南伊勢町の改革を支援している元吉さんから、変革プロセスの経過報告がありました。これら相互の内容を関連付けることで、首長がマニフェスト等に掲げたビジョンを職員がいかに受け止め、行動や仕事のしかたを変えていくのかについて、データとその背景となる要因を明らかにすることができました。


 昨年の調査は、現首長になってから、役所全体/職員個人/職場の状況について、前首長の時より、各質問に関する行動や状況が強くなっているかどうかを聞きました。南伊勢町における昨年の調査結果では、前首長時より「強くなった」との回答が、「首長のビジョンを知っている」で86%、「首長のビジョンに共感している」で59%、「首長のビジョンを意識して行動している」で47%となっていました。ここからマニフェスト等でビジョンを職員と共有できていることは確認できましたが、それだけでは職員の共感や行動には十分結びつかない点があることもわかりました。


 今年の調査では、現在の首長の就任1年目と比較して2年目の行動や状況が、より強くなったかどうかを聞いています。
 その結果、「前年よりも強くなっている」と感じる人の割合が低くなったのは、次の項目です。


 ・首長はビジョンについて階層・課に関わらず、職員に直接話をすることが多い
 ・首長は現場の職員の話をよく聞いている
 ・首長のビジョンを知っている
 ・首長のビジョンに共感している
 ・首長は、ビジョン実現のために明確な課題を設定している


 一方、「前年よりも強くなっている」と感じる人の割合が高くなったのは、次の項目です。


 ・首長の示した課題に対して、多くの職員は解決しようと行動している
 ・事業の目的に対して、達成できたかどうかがわかるような「成果(目標)」を設定している
 ・担当事業の成果を測るために、住民に理解されやすい「指標」を設定している
 ・首長からの課題を実行するために、理解を深めるための話し合いの場を職場(課)で十分に設けている


 データからは、1年目から2年目にかけて、首長に対するインパクトが弱まっているように見えるが、それはなぜか。一方で、首長の示した課題や事業の目的に関して、職員が「成果(目標)」や「指標」を設定し、その解決のための行動をしたり、実行のための話し合いを職場で行なうようになっているが、それはなぜか。両者には因果関係と関連性があると考えられました。


 これについて、小山町長によると、就任1年目にはマニフェストの内容について全職員と直対話する場を設け、意見交換を行なっていたものの、2年目は行なっていないこと、一方、課長とは1年目同様に月に一度半日の時間をかけてじっくり話し合うオフサイトミーティングを実施しているほか、年度初めに町長が経営方針を出し、それをもとに各課長が経営方針を立て、課題を共有するための面談を実施しているとの報告をいただきました。
 また、首長が町内に38ある地区ごとに町政説明会を巡回して開催する折には、課長も同行して説明を行ない、東日本大震災後には、津波被害が想定される地区の現状把握を一緒に行うようになったとのことでした。
 プロセスデザイナーの元吉さんからは、南伊勢町で町民サービス向上の取組みを行なうにあたっては、課長が経営方針をもとに各課ごとの
「サービス向上目標」を設定し、プロジェクトメンバーである職員とともに職場ぐるみで目標達成に向けた取組みを進めていることの報告をいただきました。
 お二人の南伊勢町の現場からの報告により、首長が就任後どのような組織運営を行なうかによって、マニフェストに掲げたビジョンの理解・
浸透を図り、職員の行動に結び付けていくことができるかについての示唆がうかがえます。
 南伊勢町では、就任直後には、直接職員との対話を通して働きかけ、首長自らが課題設定する必要がありましたが、2年目になるとトップへ
の依存度が高まらないようリーダーシップスタイルを切り替え、職員がビジョンの理解をもとに自ら目標を掲げ、課題を設定できるようPDCAサイクルを回すしくみを導入して、職員が主体的に考え、行動していけるような機会を創出しています。このときには、首長と職員の間にたつ管理職の役割が重要で、課長が自らの言葉で首長のビジョンを現場職員にわかりやすく伝え、町民目線で、町民の立場にたった課題の選定や目標を設定することによって、職員も課題解決のために自ら考え、行動するようになることができるという理解ができました。
 現場のリーダーや側面支援の立場から直接話を聞くことで、データを理解するうえで有意義な背景要因を得る機会となりました。
 

プロセスデザイナー 宮入小夜子

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