Column コラム
公共組織支援メールニュース 2013年08月
もしも改革担当部署に配属されたら・・・(その2)
今回は、先月に引き続き、改革担当部署に配属された担当者が、組織風土改革の取組みにおいて遭遇するだろう新しい仕事のやり方、求められるパラダイム転換のポイントの続編です。
●「自分を知り、自ら変わろうとする」仕事のやり方
私たちのところには、組織変革がうまく進められず、その原因は組織の内部にあるのではないかと考えている方が、相談に来られます。このとき私たちが最初に接するのが、改革部署の担当者です。彼らは、自分たちは改革を進める側にあって、変わらなければいけないのは各職場だと思いがちです。しかし、同じ組織の中にいて、同様の風土・体質を持っているはずですから、まずは自分たちの中に潜んでいる風土・体質の存在に気づく、「自分を知る」ところから、その思考パターン、行動パターンを変えていく、「自ら変わろうとする」姿勢を持つことが求められます。
ヒントは、大きな改革レベルよりも、日ごろ何気なく行なっている一般的な事務作業の中に数多くあります。
例えば、「企画書」のつくり方において。
新しい取組みに着手するとき、担当者が作成する資料を見ると、冒頭に現状の問題点が列挙され、その横に今後取り組むべき解決策が対応して記載されていることがしばしばあります。これは、すでにやるべきことが決まっていて、できていない箇所に対して実施を強化していく場合には有効な方法です。役所で扱う法律や制度に基づく事務には、このウェイトが高くあるのだと思われます。
しかし、何に取り組むのかもまだ定まっておらず、取り組む目的や課題の設定から必要な場合にはあてはまりません。組織風土改革の取組みは、まさにそうです。問題も、単純に一対一で解決策を紐づけてとらえられるものは極わずかで、もっと複雑です。何が原因か、現象面での問題だけではなく、原因を掘り下げて構造的にとらえ、本質を見極めることが必要になります。
次に、「会議通知」の書き方について。
先の「企画書」と同様に、会議を開くときの会議通知にも、会議名称と議事のみが記されていて、目的が記載されていない場合がよくあります。これも、役所の場合、法律や制度に基づく仕事が多くあるため、その背景にある目的をわざわざ付す必要がないためかもしれません。しかし、その結果、召集がかかれば集まるという、従順な(?)行動パターンができ、いつしか「何のためか」を考えないまま、手段を与えられるとそれを黙々とこなす仕事のやり方が体質になっているということはないでしょうか。
もうひとつの例は、「説明会」での伝え方です。
会議の中でも、何かを知らせ、情報共有を図る「説明会」という形態があります。特に、新しい取組みは、広く説明して、共有を図る必要が生じます。このとき、みなさんはどのように説明会を設営、運営しているでしょうか。大抵の場合、机を教室形式に整然と並べ、説明者が一方通行に伝達する。書面に書かれた文章を一語一句間違えないように配慮しながら読み上げ、参加者は聞いているだけ。最後に質疑応答の時間を設けているものの、大勢の前で発言する人はめったにいないという運営がされています。
役所では、法律や制度などに基づいて資料が作成されていることから、このような説明会が長年習慣化しているようです。しかし、今日では情報を伝えるだけならば、メールやイントラネット、ホームページで十分可能になりました。わざわざ会合を設けるとすれば、もっと有効に使う方法があるのではないでしょうか。
文章で伝えられないことを双方向でやりとりするような運営ができると、職場ごとの特性に応じた意味合いの解釈や活用のしかたに関する理解が深まります。参加者同士が話し合うグループワークや全体協議のできるスタイルを工夫すると、なお効果は高くなるでしょう。
一度染み付いた風土・体質は、それが良いとか悪いとかの疑問を持つこともなく、ただ漫然と繰り返して、いつの間にか「こんなものだ」という固定概念になってしまうものです。改革部署の担当者には、まずは自分たちにも染み付いた思考・行動様式の枠があることを自覚して、みずから枠を外して率先する行動を起こし始めることが大切です。それが、組織展開を図るときに生まれやすい「やらせる側」と「やらされる側」の垣根を取り除き、ともに力を合わせて変革に取り組む信頼関係を築いていくことにつながります。
プロセスデザイナー/行政経営デザイナー 元吉 由紀子