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公共組織支援メールニュース 2014年06月

改善運動が役所組織に根付くには? ~「自治体改善マネジメント研究会」の中間報告~

 以前は「何か改善の取組みをしていますか」と質問すると、ほとんどの自治体から「職員提案制度」という同じ回答がありました。それが、昨今では職員が自ら改善を実行する「改善運動」がいろいな自治体で行なわれるようになっています。取組みが大きくなり、全庁的に発表会をするところも増えています。
 そして、平成19年には全国の自治体が集まって改善事例を発表し合う「全国都市改善改革実践事例発表会」が山形市で行われました。この発表会は、福岡市のDNA運動発表会大会“DNAどんたく”を見て触発された全国各地の職員たちが中心となって始めたものです。その後全国大会は毎年開催都市を替え、尼崎市、福井市、中野区、北 上市、大分市、さいたま市、そして、今年3月末にはルーツである福岡市で開催されています。大会は、毎年全国から約500人が集まる盛況で、翌日には改善運動の推進事務局や関心のある職員どうしが交流し、改善運動のあり方を考え合う「カイゼンサミット」も実施されるようになりました。

 大会を見に来る参加者の中には、「自分たちの自治体でも改善に取り組みたいのですが、なかなか組織的に認知されません。なんとか活動を広げたいのですが、どうしたらいいでしょうか」と悲痛な声をあげる職員がまだまだたくさんいます。一方、何年にもわたって改善に取り組んでいる自治体の職員からは、首長が交替した途端 に発表会がなくなってしまったり、改善事例数は増えているけれど、活動内容がマンネリ化しているなど、推進上の問題が出てくるようにもなりました。また、推進事務局を担っている職員からは「もっと各職場で熱心に活動してくれるといいのですが、現場にやらされ感があるのです。各課から出す案も、課長が部下に仕方なく出させ ている状況が見られます」「職場によっては上司から『忙しい中そんなことをしているヒマはないだろう』と差し止められることがあるようです」と悩みが聞こえてきます。

 そこで、長年改善運動に取り組んでいる自治体の中で取組みの中核になって活躍している職員たち数名と、「自治体改善マネジメント研究会」を昨年度から立ち上げました。どうすれば改善運動を継続、進展させ、役所組織に根付かせていけるのか、行政経営の目的からよりよい運営のあり方を考えていけるよう、実践事例をもとに研究しています。
  研究会のメンバーは、所沢市、さいたま市、中野区、横浜市、三重県、福岡市の職員です。活動は、全国各地から集まってくるため、活動は当初年4回ほどの会合を予定していました。しかし、実際には隔月ペースで年に6回も開催する熱心な取組みとなっています。

 最初は、それぞれの自治体でどんな取組みをしてきたのか、各メンバーがその中で果たしてきた役割や体制、活動してきたことを聞き合うところからスタートしました。抱えていた課題や悩み、ぶつかった壁、苦労したけどやってよかったこと、気づいたこと、若手の職員の成長を目の当たりにしてうれしかったことなど、実践者だからこその生きた経験談は尽きることがありません。結局、6都市分を一巡するだけで3回を要してしまいました。
 ただ、それらをどれだけ聞いてみても、何が問題で、今後取り組むべき課題は何か、方向性が見えて来ない状況にありました。これは“わからないことがわかる”というとても不思議な現象でした。 その原因をよく考えてみると、“改善運動”は法律や制度、国からの指針や指導があって始まったものではないため、進め方に自治体共通のひな形がなかったことに起因しているからかもしれません。自治体ごとに自由に取り組める裁量がある分、取組みの目的ややり方はまちまちです。中には首長が3人目となる自治体があり、同じ自治体の中でも様変わりしているところがありました。情報はたくさんあるけれど、とても分析できない状態にあったのです。
 

 それゆえに、個々の取組みを分析していくためには、行政経営の視点から共通の着眼点を設けて情報を今一度項目ごとにチェックしていく必要がありました。そして、再度情報を集め直し、整理してみたところ、それぞれの自治体の特性、実施事項の過不足、背景要因の有無が顕著に見えるようになってきたのです。 これは言い換えれば、「何のための改善運動か」目的を見失っていたこと、また取組みをふり返り全体から位置づけを確認していないことを表しています。“改善”は、本来何か変えたいものがあり、それを実現するために行っているものです。PDCAサイクルの最後のAction(改善)ですから、そもそもそれをどうすればいいのか に迷ったときには、最初のPlan(計画)に立ち返ってみることが、改善運動をカイゼンするヒントになるということがわかってきました。
 今年度は、このヒントをもとに研究メンバーたちの事例について今後の課題を見出し、半歩でもいいので進展させていく方策を見出していきたいと思っています。

 この研究会の中間報告について、一部3月に開催した「カイゼンサミット」の中でご紹介しました。さらに、来る8月22日には、「自治体学会」の分科会「改善運動による組織力の向上 ~楽しく、よくして、ほめられる組織マネジメントのススメ」の中で改めてご報告をする予定にしています。会場では、中野区長と三重県南伊勢町長 をお迎えし、中野区とさいたま市の研究会メンバーとともにパネルディスカッション方式で行ないます。各自治体の事例報告をもとに、首長と職員の両視点から現状と課題、今後の展開方向性を一緒に考えていきたいと思っています。
 今年度の自治体学会は富山県高岡市で開催されます。ご来場を心よりお待ちしております。

 

プロセスデザイナー&行政経営デザイナー 元吉 由紀子

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