Column コラム
公共組織支援メールニュース 2014年11月
課長のマネジメント力をつける ~連載「職場のPDCAマネジメント実践講座」から~
今年4月から、月刊『地方自治職員研修』で連載「職場のPDCAマネ ジメント実践講座 ~仕事を通じて人を生かし、成果につなげる」 をお届けしています。ここでは主に課長を対象として、1年を通じて月ごとのマネジメントに役立つポイントをご紹介しています。今月12月号が発売されると残り3回となりますので、今回はこの連載で 私が大切にしている3つの視点をお伝えします。
一つめは、目標に希望と熱意を込めて語るリーダーシップについて。
役所では、組織運営に関して様々な制度や仕組みが導入されるよ うになりました。政策には「事業目標」が、職員には「個人目標」 が、そして、職場には「組織目標」が用意されていますが、目標を ペーパーに書いて示すだけでは、職員は目標に書いていることだけ をこなすだけの、やらされ仕事をするようになってしまいます。
どの目標にも、共通してめざす地域の将来像があり、目標を達成 した先には得られるだろう住民の満足があります。職員は、それを 想像して、どれだけワクワクする期待や希望を感じているでしょう か。また、将来像を実現するためには、多様な主体に対して役所が 担う役割があり、役所でなければ果たせない使命があります。職員 は、このことにどれだけ熱意を持って取り組めているでしょうか。
職員の仕事に対するやりがいは、目標の先にある目的や意義を、 課長が自分の言葉で語り、希望や熱意を伝えていくことから生まれ ます。
二つめは、一人ひとりの成長を後押しするスポンサーシップについて。
地方公務員法が改正され、すべての自治体に人事評価制度が導入 されるようになりますが、評価をすれば成長するというものではあ りません。職員の成長には、実態をしっかり見て、個々人の強みと 弱みをすべて事実として受けとめる上司と部下の関係が必要です。 Before → Afterの変化を得るには、現状(Before)をあるがまま に認め合うことが出発点となります。
それには、今年度の仕事をしている側面だけではなく、自身の人 となりや過去の経験から、今後めざしていることや、やってみたい ことなど、素の自分自身を語り合う“ジブンガタリ”の場づくりが 役立ちます。課長が肩書を外して、一人の人生の先輩として向き合 い、部下の話をよく聴き、ときには課長の弱みを見せて部下に相談 してみることを通じて、部下が自分自身をみつめ、今後の自分の目 標(After)を見出す力が培われてきます。
また、このようにして部下を理解していると、本人が実現したい ことに対して前もって関係者に協力をとりつける働きかけをしたり、 成し遂げたことを対外的に発表する機会を用意するなど、間接的に 育成を支援することも可能となります。
三つめは、互いに助け合えるチームを築いていくコーディネート について。
人も財源も少なくなった行政職場においては、職員は自分の担当 業務をこなすだけで精一杯のところがあります。それでも、地域の 課題はどんどん深刻化して、目標達成度がシビアに評価されていて、 成果を高めていかなければなりません。それには、部下の特性を掛 け合わせる協力関係を築くことによって、1+1が3以上になるよ うなチームとしての突破力をつくっていく必要があります。
課長が、職場内の関係づくりのベースとして、日ごろから気軽に 話しやすい場を設けたり、事業の進捗状況についてデータ系の情報 だけでなく、現場で五感を通じて得られる情報を共有する機会を設 けることによって、職員どうしの距離感は縮まります。
また、職員が壁にぶち当たっているときには、原因を問いかけ、 必要に応じて多様な人の意見や情報を集めれば、問題の全体像と課 題の本質がつかめるようになります。そこから課題解決の方向性を 見極め、責任者を明確にして、新しい価値創造のために組織を越え た横断チームで取り組むと、全体の実行力が高まります。
課長は、職場のトップとして、業務の進行を管理するだけでなく、 前に出て牽引することや、ときには後ろに回って後押し、また、と きには職員どうしをつなぎあわせる機能を果たすことが、組織全体 の能力と発揮する力を高め、成果を最大化していくことにつながっ てくるのです。
プロセスデザイナー&行政経営デザイナー 元吉 由紀子