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行政経営デザインメールニュース 2025年08月

広島県主催 チームイノベーション道場【略称TIES(タイズ)】について

本コラムでは広島県主催の企業支援プログラムチームイノベーション道場 【略称TIES(タイズ)】について、企画者のAさん、企画の背景、取組事例、 今後の可能性について報告する。プログラムの内容は文末の県HPアドレスから 確認いただきたい。

 

●企画者Aさん

 

広島県主催の企業支援プログラムチームイノベーション道場【略称TIES(タイズ)】は8年目を迎える。 参加者がイノベーションを起こしていく技能の習得を目的に県担当者Aさんと 虎ノ門大学院・村上敏也教授と私たちで開発したものだ。 ノウハウ習得や座学の場ではなく、参加者がイノベーションを 起こし続ける技能習得に最適な場を目指している。 背景には、長年企業支援に携わってきた県担当者の想いがある。

 

Aさんの実家は工場を営む。弟さんが家業を引き継ぎ、自分は県内企業の 経営する環境を整えるべく、県庁への就職を決めた。県では産業支援に関わり、 県産品の販路開拓支援、機械設備の導入支援、経営計画の策定支援など、 さまざまな事業を企画して第一線で当事者として取り組んでいる。 間接的な支援者の枠を越えた関わりをしているAさんにはファンが多い。 県産品の販路開拓支援などでのAさんの働きを知っている人が、 Aさんが企画したものなら間違いないだろうとチームイノベーション道場への 参加を決めた人も少なくない。Aさんの仕事ぶりには多くのリピーターがいる。

 

●背景にある想い

 

B社に導入した設備が使われていない。Aさんが支援先B社の社長と 夜遅くまで議論して新商品をつくるための設備導入は、結果、 思ったようには使われていなかった。理由は、社員からの現在の作業で 手一杯で着手できないという反発で稼働できないというものだった。

 

社長と現場のギャップは、支援する過程でなんとなくは気づいていたが、 介入する術もないままにいた。Aさんは自分も支援企業の一員になった つもりで当事者として成果に責任持つ形で仕事をしている。だからこそ、 新商品に前向きな社長とギャップを埋めきれなかった設備導入の案件は、 Aさんに次のような視点をもたらした。

 

・設備≒お金の支援から脱却するには。
・セミナーを生きた勉強会にするには。
・社長がワンマンで進めていることへの限界を知るには。
・逆に社員の前向きな意見を取り入れる雰囲気をつくっていくには。

 

新しい支援の形を模索している中で、自ら考えて動けるリーダーの要請に 力を入れていた虎ノ門大学院・村上敏也教授との出会いがある。 「この人とならできるかも」と、Aさんの視界が少し開けた。しかし社長だけを 応援しても苦い思いは繰り返す。社長の仲間をつくる。もうひとつの柱を 考えた風土改革というキーワードに行き着いたという。

 

Aさんと村上先生とのディスカッションを繰り返し、 変化のための具体策としての「一品」を提案。プログラムには社長プラス2名、 計3名以上で参加するのを条件として。共に学び、共に変化の具体策を考え 動かすための場、チームイノベーション道場【略称TIES(タイズ)】は 思考力×推進力×具体策の三位一体のプログラムとしてスタートを 切ることができた。

 

●TIESの学びを生かして過去最高レコードを更新するC社

 

C社は若手パティシエの夢を応援する。社長がTIESをきっかけに心に決めた。 そして菓子発売への最終決済を現場社員に預けた。なぜなら 「お客様のために仕事をする風土」をつらぬくためである。

 

安全基準を守り会社の定番商品は覚えてもらうのが前提だが、 スタッフには「チャレンジ商品」をいつでも開発販売できる権限を持つ。 製菓学校を卒業して入社してくるスタッフは、プロ一歩手前の技能を もってはいっている。以前のような修行期間はもう必要ない。 自分の仕事がお客様との仕合せをつくれるか否か。仕事そのものでの 嬉しさや悔しさを体感することでの成長が促されていくのが 過去最高レコードの原動力だ。

 

さらに社長はすごい仕掛けを考えた。「独立支援制度」である。 自分の店舗を持ちたいスタッフには支店を任せて5年間店長をやってもらう。 そして減価償却が終わった段階で自分のお店として買い取って 経営することができる現代版ののれん分け制度である。引き継ぐ人は、 同じ店名でもいいし、自分のお店として名前を変えてもいい、という リスクを最小化して独立ができるものである。 将来は自分の店を持ちたい。でもリスクは最小限でいきたい。 商品開発などの刺激もほしい。スタッフが感じる不安と将来の夢を 織り込んだ独立支援制度はキーマンの経営化を支え、 会社に活気をもたらしている。

 

●自社ならではのイノベーションをしかけるための支援プログラムTIES

 

「自社ならではのイノベーション」を手にするためのプログラムがTIESである。 今回紹介したB社のように、参加者は自社にあった変化し続けるための仕掛けを、 飲食チェーンの方も、社労士事務所の方も、製造業の方も、職人会社の方も 業種に関係なく、大なり小なり手にしている。 飲食チェーンは「店舗毎のオリジナルメニュー」を武器に、社労士事務所の方は 「2年間で一人前デビュー」を合い言葉に、 製造業の方は「製販一体顧客訪問」のアクションで、 職人集団の方は「全員が採用担当者」になって、 「自社ならではのイノベーション」を実現して、 業績向上とモチベーションアップを実現している。 変化への思考力、変化を実践する仲間、変化の媒介としての商品・サービス、 Aさんのくやしさをバネにつくった三位一体の支援プログラムTIESは、 参加企業の1社1社ならではのイノベーションを支えている。

 

▼TIESの詳しい内容はこちら

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/70/ties.html

チーム・イノベーション・プログラムデザイナー 岡村衡一郎

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