Column コラム
公共組織支援メールニュース 2012年02月
新たな社会サービスを担う「社会起業家」を育てる
社会起業家を育成するビジネススクール「社会起業大学」(注1)に、当社のプロセスデザイナー・與良昌浩さんが通っていました。その卒業式にあたる「ソーシャルビジネス・グランプリ」でファイナリストとして発表するというので、先日、応援に行ってきました。彼は、「“自分らしく働き、いきいき生きる”人で溢れる社会を目指したい」という自らの思いから、学生と社会人で「何のために働くのか」を気楽に真剣に語り合う場「ハタモク(働く目的)」(注2)を個人の活動として始め、今はその代表としてどんどん共感の輪を広げています。
「社会起業家」とは、一般的には「医療・福祉・環境などの社会サービスを事業として行なう人」と定義されていますが、単なるボランティアではなく、社会的課題に対して当事者意識を持ち、社会性と経済性を両立させて取り組もうとしている人たちです。
最近は、企業で働きながら仕事を通じて社会に貢献することを真剣に考え、行動している人たちが増えてきました。社会の課題に対して自分の力で何とかしたいと立ち上がった人たちは、今、地域や社会を変革するイノベーターとして、企業や行政を巻き込んで、公共のサービスのあり方に影響を及ぼし始めています。
従来は行政だけがサービスの担い手であった地域や社会の問題は、ますます複雑で多様になっており、これからはすべてを行政が担っていくのではなく、民間や市民との協働が求められています。 企業も「社会的公器」として、社会的責任をより重視するようになり、社員の社会的活動に対しても理解を示し、積極的に支援するところも増えています。
社会起業大学名誉学長で社会起業家フォーラム代表の田坂広志氏は、21世紀はどのような企業も組織も、「いかにして社会に貢献するか」を考え、同時に「いかにして活動を継続する資金を事業から得るか」を考えなければならない時代であると述べています。さらに、不断の変革を求められる環境下では、企業も公的組織も、「起業家的」な新たな革新や事業を生み出す手法が不可欠であることを強調しています。 こういった意見や社会環境の変化から観ても、社会奉仕や慈善活動といったボランティアの活動家ではなく「社会起業家」が増えていくこと、つまり、寄付や助成金に頼らずに自立的・継続的に行なう事業の経営者であり、実践者が増えていけば、新たな社会システムを築くチャンスが広がっていくはずです。
以前ご紹介したことのある、大企業の幹部を対象にした社会ビジネスリーダー養成のためのプログラムを提供しているISL(注3)でも、昨年、「社会イノベーター公志園」(注4)という大会を開催しました。全国から強い志と使命感を持った社会起業家たちを公募し、企業の経営を担う第一線のビジネスパーソンが経済性と持続性を一緒に考え、支援する機会を創出しています。第1回の全国大会での代表発表者たちは、ビジネスマンたちに深い共感を与え、大きな支援の輪が広がり、それは東日本大震災の支援にもつながりました。 今年は、7月に気仙沼で開催される第2回全国大会をめざして、ISLを卒業したビジネスパーソンや企業経営者が3月の開会式後、このような社会イノベーターたちの志を形にするために伴走し、彼らの経済性と持続性を高める支援をしていく予定です。
こういった支援によって、社会の問題解決を持続可能な事業として担う志をもった社会起業家が増えていけば、新しい公共における協働のあり方も変化していくかもしれません。 私も積極的に、「ハタモク」をはじめ、社会起業家を支援するプログラムに関わっていこうと思っています。
プロセスデザイナー 宮入小夜子