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行政経営デザインメールニュース 2016年03月

人づくりの現場から学んだこと(2) ~京都府立林業大学校運営からの気づき~

林業の専門技術を教える京都府立林業大学校(以下「林大」)が、平成24年4月に創設されました。この林大の立ち上げに副校長として関わられた木村さんからお寄せいただいたコラムの第二弾です。

Ⅱ林大を作り上げた人たち

平成24年度は、12名の職員で林大がスタートしました。自分たちで作った合い言葉「志・夢・行動力を持つ人」と「自然を尊敬する人であれ」(前号のコラム参照)を共有することを通じて組織がひとつになってきたことは先に述べました。しかし職員だけが大学校を作ってきたのではありません。大学を支えるいろんな人たちとともに作りあげてきたのです。

林大は“職業人育成”の学校です。そのために、現場を最も承知している林業事業体(山に木を植え、育て、伐採する森林組合や企業)のベテラン技術者を外部講師に招聘しました。平たく言うと、毎日山で林業機械を操縦している大将が先生です。
また、京都の歴史ある寺社建築の棟梁や仏像彫刻の仏師から木の文化を守る意義を最高峰の技とともに教えてもらいます。
こうした方々は、我が国の豊かな森林や文化を営々と守り続けてこられた心の様を学生に熱心に語ってくださいます。

山の仕事は、見上げるばかりの大きい木を伐採することから始まります。倒した木を最適の長さに切断し、麓の集積場まで運び出さねばなリません。足場の悪い傾斜地で重量物を扱う危険度の高い仕事です。この作業は技術者3~4人の連携が鍵です。
こうしたことは、土の臭いがする生の現場からしか学べません。さらに、仕事に対する誇りと責任感は当事者しか語れません。教科書からは伝わりにくいでしょう。そうした理由から現場のプロは林大で欠くことができない大切な先生方です。

さらに林大を力強く支えていただいたのは地元住民の方々でした。
優れた教育プログラムを用意することと並んでとても大切なことは、学生が学業に専念できる環境を整えることです。と言っても学生がのびのびと2年間を過ごせる地元の生活環境を学校は作れません。急ごしらえの林大は下宿先はじめ地元事情も不案内でした。

そこで林大をバックアップするのが我々の役割だと地元京丹波町の自治会はじめ農林業や商工など様々な団体が参加して結成された「林業大学校地域連携協議会」が林大をがっちりと支えてくださいました。
林大生の4分の3は他府県から来ています。北海道・九州出身者も珍しくありません。協議会に学生を呼んで生の声を聴いてもらう場面もありました。こうして初めての土地で一人暮らしを始める学生への下宿の斡旋・管理、格安で食事の提供、アルバイトの紹介など生活全般のサポートをいただき大変感謝しています。

おかげさまで地域になじんだ学生たちは、地元の祭りでの御輿担ぎや、ソフトボールやバレーボール大会のメンバーとしても定着してきました。清掃活動にも加わります。林大が地元の一員に認めてもらいました。
高齢化で子供の少ない地域ですから、若い林大生は注目の的です。親しく声をかけてもらったとき、明るく挨拶することが社会性を身につける第一歩です。
学生が京丹波町で暮らす2年間お世話になる地元の方々も、林大の大切な先生です。

林大を作り上げた人の3番目に学生たちの関わりを紹介します。
先に述べたように開校時は行政のベテラン職員も教師職は初心者マークです。講義ごとに学生に振り返りシートを提出してもらって、理解度をチェックしました。講義終了直後に「先生の話、わかった?」と聞くことも厭いませんでした。
その頃学生も学校をより良くしたいという思いを持っていました。教師と学生が授業のあり方について立ち話をしているのは林大の普通の光景でした。そこで生まれた個々の気づきは職員会議でさっそく意見交換です。例えば「○○教科は講義のレベルが高くて難しい。HELP!」との声に、カリキュラムを見直し、基礎コースを新たに設ける改善をしました。より良い学校を目指して、教師と学生が真剣に語り合ったのは、口にはしないけれど双方が「自分たちが学校を作っているのだ」という思いを持っていたからだと思います。創業期独特の緊張感と使命感を肌で感じながら仲間と仕事ができた日々は貴重な経験でした。  

次号最終回では、これら合言葉(学校経営で大切にする価値観)をもとに、そこに参画する人たちができ、相互に関わり合いながら、次にどのように学生を育てる環境を整えているのかについてご紹介いたします。

京都府立林業大学校 木村 祐一(前副校長)

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