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行政経営デザインメールニュース 2016年04月

人づくりの現場から学んだこと(3) ~京都府立林業大学校運営からの気づき~

林業の専門技術を教える京都府立林業大学校(以下「林大」)が、平成24年4月に創設されました。この林大の立ち上げに副校長として関わられた木村さんからお寄せいただいたコラムの最終回です。

Ⅲ 人を育てるエネルギー

「自然の中で働いてみたい」という動機で林大の門をたたく学生が多いです。美しい自然に心がひかれるのは、森林に敬意を持つことの表れですから好ましいことです。大事なことは、その気持ちからスタートして「林業こそ自分の生涯の仕事だ」という信念が持てるかどうかです。

入学後、木の名前を覚え、森林の科学と林業経営の理論を学習し、太陽の下で種を蒔き、苗木を育て、成長した木を伐採し運び出す仕事を体で学びます。まる一日山に入っての実習は決して楽ではありません。

卒業までわずか(・・・)2年間です。学生は急勾配のプログラムを登りきらねばなりません。立ち止まりたいところを励まして、やる気を持たせて自分を成長させるように導いてあげるのが学校の役割です。学生たちを動かすのは教師の熱く真剣な姿勢です。そのため職員全員が365日熱い気持ちを持ち続けることが学校経営の一番の要点だと実感しました。

少々手狭なのを我慢して、職員はひとつの部屋で机を並べています。それなら気付いたときにいつでも問題提起ができます。即ミニミーティングが始まります。情報共有も一声です。朝礼で元気よく一日をスタートさせるスタイルも定着しました。職員会議の定例化。さらには夕方5時以降の懇親会も味のあるミーティングです。

加えて、学生へより質の高い教育が提供できることが、教師の熱意の源泉になります。
全国の先輩林大と情報交換が盛んです。また本校客員教授からは4年制大学のノウハウを伝授してもらいます。そうしたネタをPDCAサイクルに盛り込んで教育プログラムを改善しています。

さらに、林大では2年生の後期に二ヶ月間の実務研修を行います。学生は一ヶ月単位で二カ所の林業事業体で働き、自分の適性を確かめるとともに、伸ばしたい技術を見つけるのです。
林大の教師は研修途中に事業体を必ず訪問します。学生の激励とともに、経営者にお会いして、求める人材像や経営哲学をお聞きします。そうして京都府内だけでなく、全国各地の事業体が希望する人材の情報が林大を刺激します。
「機械操作技能など個別の技能は就業してから腕を磨けるが、責任感や協調性をしっかり身につけた者がほしい」という声が共通しています。
こうした声に応えていかねばならないとの思いが教師のファイトにつながっています。

<終わりに> 

京都の林大は全国で6校目でした。その後27年度には秋田県と高知県が新たに設立するなど全国でこうした林業技術専門の公立学校が増えつつあります。

本校卒業生は単年度で見ると20名程度とわずかな人数ですが、毎年巣立っていく学生は厚みを増して着実に各地でその技量を発揮していきます。
森林が安定した生態系を築くためには数百年以上の年月が必要です。目先の判断で森林管理を左右するのでなく、未来の姿を見据えた経営が必要です。国際化が進む経済状況下、我が国の一次産業は大きな岐路にさしかかっています。林大の卒業生は困難な時代背景の中、長いスパンで物事を見通す人になってもらいたいのです。
わずか2年間の林大教育プログラムが、彼らの数十年先まで保証できるものではないでしょう。ただし、森林を守り育てる考え方はきちんとマスターしてもらうよう組み上げているつもりです。

以上、林大が今日まで歩んできた道のりを紹介しました。林業技師の私がこの分野しか知らなかったら林大経営は担当できなかったでしょう。幸運なことに林大配属の前に3年間京都府の行政経営に関する部署にいた経験が多いに役立ちました。そのときは府庁の全部局を対象に組織風土改革を支援する仕事でした。打って変わって今回は私が最前線で自らの組織を経営する立場です。
順調に林大は動き始めました。その過程で職員が価値観を共有した組織の底力を実感しました。身震いするほどの感動です。さらに、学生が目に見えて成長する手応えは林大で働く喜びそのものです。

林大の職員の目が輝いています。
職員が元気な学校だから学生も元気です。幅広い人々の参画を大切にして、これから先も活力ある林大が続くことを確信しています。

▼京都府立林業大学校のご案内 http://www.pref.kyoto.jp/kyorindai/  

京都府立林業大学校 木村 祐一(前副校長)

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