Column コラム
行政経営デザインメールニュース 2017年11月
首長と組織をつなぐ「行政参謀」のナレッジ化に挑む ~自治体改善マネジメント研究会に新「参謀部会」誕生!~
行政組織と民間企業の最も大きな違いは、トップが公選によって 選ばれることにあります。トップ(首長)には、医師や弁護士、地方議員や国会議員、国家公務員など、当該自治体の行政組織とは関わりのなかった 経歴を持つ人が多くいます。その場合、トップの意志を組織に伝え、トップの意図する通りに組織を動かしていくことは容易ではありません。
これは職員にとっても同様で、ベースにある価値観が大きく異なる人のもとである日突然仕えることになるわけですから、その意図をうまく汲み取って仕事を進めていくことは実に難しいものです。 特に現職と対抗して出馬した人は、政策だけでなく、既存の行政組織の働き方についても異なる方向性や改革を迫るマニフェストを掲げていることがあります。その場合、職員が例え一生懸命にやったとしても、トップの意に沿わないことがあるでしょう。
まずはトップの指示命令に形合わせておく、ということから始まるのも やむを得ないことのように思えます。しかし、それが「面従腹背」になってしまうようではいけません。できるだけ早く意思疎通して、ギャップを埋めていく必要があります。
しかし、行政組織はあらゆる政策を所管して、各種の法律や制度に基づいて動いているところが多くあります。組織内には各種の計画や経営システムに関わる仕組みもあります。首長の目がこれら行政運営の隅々にまで行き届くわけではないでしょう。さらに、自治体は二元代表制で運営されているため、重要事案については 議会の決議を受ける必要が出てきます。首長の思いがわかったとしても、 すぐに反映できるとは限りません。
それゆえ、首長の身近にいて、その意志を一早く理解し、組織のマネジメントにつなげていくことが重要で、その役割を期待されているのが、副知事、副市町村長、並びに、行政経営や行政改革、企画や財政、人事などの管理部門長と言えます。
そこで、私たちは、このように首長の意志を組織のマネジメントに つなげていく役割を「参謀機能」としてとらえ、この機能を担っている当事者たちが語り合う「参謀交流会」を開催しています。
最初は、年に2回春と冬に開催している「公務員の組織風土改革世話人交流会」 の中で、これら参謀機能を発揮する立場にある職員同士が、それぞれの抱えている思いや悩みを語り合う分科会として開催していました。 ただ、年2回ではすぐに首長が交代したり、本人が異動したりして、 有意義な話し合いも単発で終わってしまいます。
それが、2013年に弊社が大阪でミーティングスペースを備えたとき、「関西で参謀交流会を開催しましょう」という声があがり、隔月に一度平日夜に集まるようになりました。
大阪は、多くの自治体が近接していることや、参加メンバーどうしがすでにその他の場で顔見知りであったり、また、ボケや突っ込みを交えた本音を語りやすい関西風土が根付いていたり、また、地方分権の流れから大阪維新の会など政策のあり方が大きく揺れ動く時期を迎えていたことなど、いくつかの要件が重なって、密度の濃い対話の場となり、コアメンバーが 継続して参加するようになりました。
今年、関西での参謀交流会も20回を超えました。メンバーの間からは、「この場で話している参謀の役割は、とても重要なもの。ただ、個々の自治体の中には相談できる人もいなくて、一人苦労している人は多いはず。ここで交わしている体験を個人的なノウハウに終わらせてしまうのはもったいない。 ぜひナレッジにして外にも発信していきましょう」という意見が 出てきました。
自治体と言っても地域の特性や経営状況はまちまちです。首長の経歴や資質も様々で、参謀機能の果たし方を一般化することなどとてもできるものではありません。 しかし、これまで議論を積み重ねてきた経験から、私たちは重要な着眼点やエッセンスを抽出することならできるのではないかと考えています。
ちょうどこの会と同じ2013年にスタートした「自治体改善 マネジメント研究会」が今年7月にNPO化したこともあり、この研究会の中に新しく「参謀部会」を設置して取り組むことにしました。 現在9月から12月にかけては、参謀機能の骨格となる要素の検討を 進めています。
コアメンバーは、主に関西にいますが、今後世話人交流会や参謀交流会の場を活用しながら、その他自治体の当事者たちの意見やアイデアを伺いながら、「行政参謀」のナレッジ化を図る案を練り上げていきたいと思っています。また、「今だから語れる」過去の経験者のみなさまのご参加や、首長から見た視点でのご意見などもお待ちしています。
行政経営デザイナー/プロセスデザイナー 元吉 由紀子