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行政経営デザインメールニュース 2022年06月

個人と組織をつなぐ結節点 その1 ありたい姿を思い描き、組織の方向性とリンクさせる

4月から「公務員のオフサイトミーティング活用セミナー」を開始しました。これは、完全なオフタイム(組織外就業時間外)で実施するフリーな交流の場と違い、オンタイム(組織内時間内)で組織 変革のプロセスに活用することをねらいとしています。
そのための場づくりには創意工夫が必要です。特に、今日のように変化が激しく先行き不透明な時代に、多様な主体と事業を推進していかなければいけない行政職員にとっては、重要な変革マネジメントの能力・スキルとなります。それゆえ、参加者の8割強を管理職 が占めています。それだけこの場が管理職にとって貴重な機会にな っているのだと思われます。

さて、オフサイトミーティングの活用ポイントについては、3月のコラムで個人と組織をつなぐ3つの結節点をご紹介しました。
▼行政経営デザインコラム 2022年3月号は、こちら
http://gyousei-design.jp/column/2022/03/post-133.php


今回は、その中の1つめのポイントである「ありたい姿を思い描き、組織の方向性とリンクさせる」について、さらに掘り下げてお伝え していきます。


●組織長は誰か

仕事をしながらもやもやした思いを抱えていたり、先行きに不安を感じたりすることが、きっと誰にでもあるのではないでしょうか。そんなとき、最初は飲み会などで、愚痴を言い合うところからスタートするのかもしれません。
しかし、その思いを前向きに解決したいと思ったとき、いきなり 「オフサイトミーティングを開催します!」とは言い出しにくいものです。

まずは、それが何のため、どんな場なのかを職場で認知してもらい、参加者に安心して参加してもらえるための場の環境を用意することが必要です。そこで欠かせないのが組織長への働きかけです。それには、まず組織長が示す組織の方向性を知り、この場がその先行きに合致していることを確かめておくことが肝要です。

しかし、一口に組織長と言っても、係、課、部、局など普段仕事をしている職場の所属長であればわかりやすいのですが、関係部署や 関係機関を含めた連携チームで事業を推進しているならば、その時の組織長は自分の直属の上司ではなく、斜めの上司である主管課長や部長となります。もしくは、人事や行革などすべての部署に関わ る制度や取組を取り扱っている場合には市長や知事かもしれません。 ここをしっかり見定めておかないと、一生懸命働きかけたつもりで も結果的に徒労に終わってしまうことがあります。

●方向性が明文化されているとは限らない

組織長が示す組織の方向性を知る方法として、最も把握しやすい情 報に「組織目標」があります。ただし、「組織目標」と言っても様 式は、自治体によってまちまちです。2016年に全国の自治体に人事 評価制度が導入されたときに、個人目標の前提として上司は組織目 標を設定することになりましたが、自治体によっては統一した様式 もなく、また、設定するかどうかも部署(所属長)任せになってい るところが多くあります。

また、組織目標には、業績となる「事業目標」が示されているだけのことが多くあります。事務事業評価シートも同様に、事業内容と予算は書かれていても、肝心の目標が活動指標になっていて成果を どうとらえるのかの指標も目標値もない場合があります。ましてやその重要性やその他事業との関連性などの記述が皆無だとしたら、 一体何のため、何を目指して仕事をすればよいのかが、明らかにならないこともあるでしょう。

これでは人によって解釈がまちまちとなり、現場では優先順位や役 割分担が定まらず、それぞれの担当者が目先の問題処理に追われる ことになりかねません。

●組織長の思いを聴いたことがあるか

今の先行き不透明な時代、こうやればいい、と自信を持って道行き を示せる上司はそうはいないものです。一見立派で厳しそうに見え る上司でさえも、将来についてよくよく話を聴いてみるといろんな 悩みや迷い、思いを抱えているものです。

オフサイトミーティングは、気楽にまじめな話をする場ですが、大 事な姿勢は「聴く」ことにあります。それにはまず、どこに何が書 いてあるのか、日頃何を言っているのかだけでなく、それはどうい う意味か、なぜそう思うのかなど、背景を含めて思いを聴くことから始めてみるのが一番です。 それは、自分たちが自分たちの思いを話し合うだけでなく、その取組の組織長が今何を考えているのかを知ることも含まれています。 ぜひこのことにもチャレンジしていただきたいと思います。 一人でも、仲間とでも、直接話を聴いてみたことがなければなお、 素朴に知りたいので教えてくださいと言って、(時間と場所を選択 してもらえるようにすれば)断られることはめったにないものです。

組織長が、どのような方向性を示そうとしているのかを知ると、予 想通りの話が聴けることもあれば、予想外の話を聴くことも出て来るでしょう。聴いたことに疑問を感じたり、意見を言いたくなったりするかもしれません。それでも、組織長の立場から見える景色がわかれば、その後自分たちが、自分たちなりにどんな場をつくればよいのかの見当がついて、作戦を立てやすくなってきます。

オフサイトミーティング活用セミナーは、毎月1回ずつ、それぞれ の参加者の取組について作戦を相談し合い、振り返って共有する相 互学習の場として開催しています。半年を一区切りとしていますが、組織によって条件は異なりますので、それぞれの人や組織の状態に 応じた歩みやときには足踏みをすることに意味があると感じています。 正解のない時代に試行錯誤するプロセスを学び合う場を行政組織の中にどう反映していけるのか、私にとってもチャレンジが続きます。

▼「公務員のオフサイトミーティング活用実践報告会2021」の模様はこちら
http://gyousei-design.jp/network/2022/03/2021.php

行政経営デザイナー/プロセスデザイナー 元吉 由紀子

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