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行政経営デザインメールニュース 2020年11月

行政経営のチームづくりは、管理部門の係長たちから

菅内閣が始まって真っ先に取り組まれた一つに、規制改革・行政改 革ホットライン(縦割り110番)があります。これは、規制・制 度の見直しや行政組織・運営の改善に結びつけるため、国民の皆さ んからの提案を受け付けるものです。
地方自治体にもそのようなニーズが多々あるのかも知れません。しかし、自治体の場合、内閣に相当するような横串を通す部署が行政 組織内にあるわけではないため、形式的に進めれば、仕組みを分断して運営しがちな状況にあると言えます。自治体では首長と職員が 国よりずっと近い距離にありますので、実質的に運用していけば、問題をすぐに解消できる可能性もあるでしょうから、仕組みをいか に形骸化させないようにするか、それは自治体の経営力にかかっています。

そこで、NPO法人自治体改善マネジメント研究会では、今年度から行政組織内で各種経営の仕組み(計画・方針・制度など)を担って いる管理部門の職員が集まり、現在の運営状況をふり返りながら、今後のより効率的・効果的な経営改善策を、部署の縦割りを超えた チームとして考えていく「チーム経営研究会」を始めることにしま した。
予定では、5月から対面でお集まりいただく場を6ケ月設ける予定 でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて3ケ月遅れで スタートし、すべてWEB開催に変更して実施することになりました。 そのため、今ようやく折り返し地点を過ぎ、今後の方向性が見えて来たところです。ここでは、今年度取り組んでいる二つの自治体の 活動から特徴的なポイントを二つ、中間報告としてご紹介させてい ただきます。

●管理部門の縦割りを超えた係長たちのつながりから見えて来るもの

管理部門には、企画、財政、行政改革、人事などに関する部署があ り、それぞれが全庁に関わる重要な方針や計画、制度を運営してい ます。これらの部署に「どんな仕組みがありますか?」と問えば、どの自治体にも総合計画や総合戦略、予算編成方針や決算報告、行財政改革プランに組織運営方針、組織目標、施策評価、事務事業評 価、人材育成基本方針、人事評価制度、改善取組など、数多くの仕 組みが並べられることでしょう。
しかし、管理部門の中でも所管する課や係が異なるため、「お互い の帳票やマニュアル、目的や使い方について共有し、運営方法を話 し合っていますか?」と問い直してみたら、どうでしょうか。自信 をもって「ハイ、やっています」と応えられる自治体はあまりない ように思われます。

そこで、じっくり中身を見合い、共有していくと、一見つながって いるハズの仕組みと仕組みの間に意外な漏れやズレがあることがわ かってきます。日々いろんな会議で席を同じくし、各種の打ち合わ せもしてきている間柄の係長たちにとって、「一体今まで何を話していたのだろうか」と、ショックを覚えるほどの盲点に気づくこと があるものです。個々の仕組みの中だけ見ていたのでは見えない 「行政経営システム」の全体像は、まさに木を見て森を見ずと言わ れる森の存在です。

●地域のめざす姿とその実現に向けた仕組みとのつながり

ただし、不具合を起こしている状態に気づいただけで、 すぐに改善・改革に着手できるわけではありません。不具合がいつ から、なぜ生じているのかの要因を探り、真の問題を解決する必要 があるからです。 それには、解決した先に何があるのか、仕組みをつないで相互のつ ながりをよくすることが、自分たちにとってどんな意味があるのかについて、しっかり腑に落ちていることが大切です。

そこで大事なのが、総合計画の基本構想に書かれた地域のめざす姿 です。

今は、法律の義務付けもなくなりましたので、策定するかしないかは、自治体の裁量によりますが、ほとんどの自治体で策定していま す。ただ、地域のめざす姿(将来像)は、すべての政策を包含して方向づけるものとなっているため、抽象度が高く、捉えどころがわ かりづらい表現になっていることがよくあります。 特に、全国一律の法律事務に携わっている事業課の職員にとっては、その意味を深く理解しなくても、仕事をこなすことができるため、そこに何が書かれているのかについては、特に気にもとめないで日々 過ごせてしまう現状があるのではないでしょうか。

そのため、管理部門で各種の仕組みに携わっている係長クラスの職員には、これら地域のめざす姿にどんな意味が込められているのかについて自ら十分理解するとともに、各事業課の担当職員に対しては実務の中に落とし込めるように咀嚼して、通訳、翻訳するサポー トをしていくことが大切です。さらには、各部署の管理職が、施策 を方向づけたり、事業を優先づける戦略づくり、または、行政評価した結果、どんな改善につなげていけばいいのかを見定めるときに補助する役割も担なっています。 特に、首長が交代した後や総合計画を改定したときには、これら支 援の役割がより重要となります。地域のめざす姿が変われば、その 方向性や目的からすべての事業を見直す必要が出て来るからです。

今回参加された二つの自治体では、一つが新しい首長になって1期 目で、総合計画ができたところ、もう一つが首長の3期目で、現首長になって二回目の総合計画がスタートしたところでした。どちらも、新しい基本構想のもとで仕組みがうまく機能できるのかを見直 すことに変わりがありません。 ただし、どちらかと言うと、前者のほうが見直すきっかけはつくりやすく、後者のほうが見過ごされやすいという傾向はあるのかもし れません。

今後は、参加者のみなさんが、この研究活動で得られた気づきと自 分たちの役割認識をもとに、いかに実行に変え、庁内の他の階層や部署に働きかけていくのかについて、実践、展開策を検討し、とり まとめていくことになります。みなさんの自治体でも、扇の要となる管理部門内からチーム力を再 構築する必要性を感じられた方は、ぜひ次年度の「チーム経営研究 会」へのご応募をご検討いただければと思います。

行政経営デザイナー/プロセスデザイナー 元吉 由紀子

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