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行政経営デザインメールニュース 2023年06月

環境変化に対応して自ら「学び・学び直す人」が育つ組織づくり

最近よく耳にする言葉に「リスキリング」があります。
経済産業省が2022年6月に出した「職場における学び・学び直しガイドライン」では、冒頭に「デジタルトランスフォーメーション (DX)の加速化など、企業・労働者を取り巻く環境が急速かつ 広範に変化するとともに、労働者の職業人生の長期化も同時に進行する中で、労働者の学び・学び直し(リスキリング、 リカレント学習)の必要性が益々高まっている」と記されています。

これは、環境が変化すると、過去に習得した能力やスキルが通用しなくなるため、働く人は常に知識やスキルを最新のものに変えていく必要があること、また、それは経験の少ない若い人よりもむしろベテランの人に必要になることを示しています。

それでも、変化のスピードが速く、先行き不透明なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性) の時代には、この先どんな能力・スキルが必要になるのかを先読みすることが困難です。
そのため、組織が主導して新しい時代に必要な能力・スキルを身に付けさせる通常の「リスキリング」アプローチだけでは、どうしても時代を後から追いかけていくことになるでしょう。

では、組織ができるだけ俊敏に変化に即応したり、 または、時代を先取りするような変化を生み出していけるようになるには どうしたらよいでしょうか。
今回は、リスキリング、リカレント学習を実践しながら、常に 自ら学び・学び直して、自ら変わり続ける人を増やしていくための 組織づくりのポイントについて考えてみました。


(1)自他の違いを感じ取り、自らをふり返る機会をつくる


自ら学び・学び直すことは、強制して成し得るものではありません。
自律的・主体的に進めていくことが前提となります。
しかし、これまで与えられたことを粛々とこなすことを重視してきた 組織では、この「自ら主体的に考え、行動できる自律した人材」は ほとんど見当たりません。

そのような組織では、まずきっかけとして外に目を向け、 自他の違いを感じ取ることから始めることをおすすめします。

職場の中であれば他者と自分、職場の外であれば他部署と自部署、地域なら住民と行政、その間で何が起こっているのか、 うまくいっていることとそうでないことについて、相互の関係から自他の違いを感じ取る対話をしていきます。
すると、自分が果たしている役割や存在価値に気づき、自分たちは これからどうあればよいのかを考えられるようになってきます。

自律性や主体性は最初から確立しているものとは限りません。他者との接点において、思い、悩み、迷いながら、自らのあり方を 考え深める中で見出されてくることがあるのです。
そのためには、環境変化の只中にあって心がゆらぎ、葛藤している状態を 受けとめる場をつくるなど、滋養力のある組織づくりが必要です。


(2)安心して相談できる仲間をつくる


さまざまに変わりゆく状況の中で、どうすればよいのかを悩み、迷い、自信を失っている人たちにとっては、それを口に出し、語り合うことには勇気がいります。そこで大切なのが、何を言ってもいいという安全安心な場の環境設定です。

昨今では1on1という部下が上司に相談できる機会を定期的に設けて いるところも増えてきました。上下関係に基づく取組も大切ですが、組織全体として主体的に問題解決する力を培っていくためには、 同じ職位・職階の横のつながりで、フランクに話をし、困り事を 相談し合う関係を築いていくことのほうが、より持続可能な取組に なりやすいものです。

コロナ禍には、リアルに会う場が激減し、相互のコミュニケーションが 途絶えてしまうことがありました。今後は単に飲み会だけでなく、定時内で部署を越えて集まり、近況を語り合い、聴き合う場を設定していくようにすれば、解決に向けて一緒に知恵を出し合う 仲間ができ、励ましや後押しを受けて、一歩踏み出す行動が出てくるようになります。


(3)失敗から学び取れるセーフティネットを用意する


それぞれの人が、現場で変化する状況をとらえて自己を再認識し、 仲間に相談しながら動き出せるようになれば、 そこからめざす成果に向けて突き進んでいくことになります。

しかし、動き出したらまたこれまでの延長線上にはない場面に遭遇することがあるでしょう。そのときには、また新たな(1)と(2)に取り組んでいくことになります。そんなことを幾度も繰り返して試行錯誤する必要が出てくるのだと思います。

「学び・学び直す」のプロセスは、現場でのうまくいかない壁や 課題にぶち当たるトライ&エラーと、現場を離れたところで実践を ふり返って新たに策を練り直すトライ&ラーンを織りなしながら進んでいくことになります。このように失敗から学び取りながら 試行錯誤するプロセスが、現場の問題解決力を高めて成功に導き、成果を生み出していくことにつながります。

それゆえ、組織においては、誰がいつまでどこまでなら 失敗できるのかがわかる、失敗を見守り、許容するセーフティネットの 環境をつくっておくことが大切です。

(1)自他の違いを感じ取り、自らをふり返る機会をつくる
(2)安心して相談できる仲間をつくる
(3)失敗から学び取れるセーフティネットを用意する

いずれも、組織においては、手段と結果が直接的に結びつく単純なものではなく、ハンドルの遊びとも言える包容力を持つことが、 変化に対して自ら学び・学び直すことのできる人が育ってくる素地になると考えています。

行政経営デザイナー/プロセスデザイナー 元吉 由紀子

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