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行政経営デザインメールニュース 2023年07月

キャリアガチャは卒業!~若手・中堅職員のキャリアプランニングについて

私は、自治体改善マネジメント研究会というNPO法人で副理事長をしている現役の地方公務員です。
今年で勤続11年目を迎え、組織の中では中堅職員になってきており、若手と呼ばれないことへの少しばかりの寂しさと、これまで以上の責任感を感じるようになりました。
今回は、私自身の経験などを踏まえ、特に、若手・中堅職員のキャリア形成についてお話ししたいと思います。

 

1.優秀な人材が辞めていく?

近年、全国の地方自治体では、採用案内や試験内容に工夫を凝らしたり、社会人枠を拡充したりと、有望な職員の獲得競争が激化しています。
しかし、厳選の末に採用した優秀な若手・中堅職員が、退職(転職)してしまう事例が増えてきているようです。
自身のステップアップや、結婚、育児等ライフステージの変化による場合はさておき、改善提案が通らない、希望する部署に配属されないなど ネガティブな理由による退職(転職)が目立ってきていることは、 非常に由々しき事態だと感じられます。

若手・中堅職員は、どうして今の職場や組織にネガティブになっているのでしょうか?
私は、その背景には次のような2つの不満があるのだと考えています。

【不満1】改善提案が通らない、協力してくれる人がいない

読者諸賢のみなさんも、おそらくかつてこのような不満を抱えつつ、その障壁を乗り越えて来られたことと思います。
私自身、不満を抱えて尖っていた時期がありました。 先輩や上司に改善提案を試みては玉砕することを繰り返して、気づけば孤軍奮闘している気分になり、「ウチの組織は風通しが良くない」「ウチでは改善提案は通らない」 と組織を批判していた時期もありました。

 

【不満2】思い通りにならない人事異動

自治体職員にとって避けては通れないのが定期異動です。 中堅になるまでに入庁時に志した部署に異動できた方は、おそらくほんの一握りでしょう。 中には、入庁後しばらくは人材育成の意味も込めて 敢えて厳しいとされる部署へ異動させる方針の自治体もあるようです。 しかも、辞令を受け取った当人に、その意図が知らされていないケースが多く存在しています。

 

2.組織を俯瞰して観る眼を養い、現象面を深く分析する

 

若手・中堅職員は、これらの不満とどのように向き合い、 モチベーションを保って自己実現していけば良いのでしょうか?
私は、これらの不満の大半は、「組織の全体像が十分に把握できていないこと」に起因すると考えています。
若手・中堅職員の多くは、自組織の経営システムや経営幹部の経営方針を 十分には認知していないところがあるものです。 組織や経営の全体像を知り、理解することなく、身の回りで起こる現象だけを捉えて現状を評価してしまうと、 組織における自身の位置付けが不透明になり、 不満が勝ってしまう可能性があります。

【不満1】については、少し視座を高くして、視野を広げてみると、有効なアプローチが見出せるかもしれません。
・自身が行なおうとしている改善は、施政方針や組織の目標と合致しているか。
・改善提案を具申する際には、何がボトルネックになっているのか、誰が難色を示しそうか、その理由はなぜか。
・誰が改善提案に賛同してくれるか。他の部署や役職者から賛同者を見つけられないか。

ただし、これらを分析するためには、少なくとも首長のマニフェストや総合計画等主要計画との関係性、議会との関係性、他部署や地域・住民との関係性などを押さえておく必要があるでしょう。

【不満2】については、人事異動は非常に複雑なパズルであり、 全ての職員の異動希望を叶えることが不可能であることは、誰もが頭では理解しています。それでも、実際に不満が噴出する問題の根源はおそらく人事評価制度にあると考えられます。 近年、自治体でも人事評価結果が報酬に反映されるようになってきました。
しかし、目標や評価基準が曖昧であり、評価結果と人事異動の相関性が不透明な自治体も存在するのではないでしょうか。「今、自分は組織からどのように評価され、この部署に異動している」というキャリアの根拠がわからないからこそ、不満が募ります。
残念ながら、この問題の根本的な解決は、制度が改善されるのを待つよりほかありません。
しかし、異動理由や人事評価以外にも、全体像を持ち、組織の中での自分の位置づけを自ら明確にすることで、自身のキャリアを確認する方法があります。

 

3.自身の活躍をマッピングし、キャリアプランを描こう!

 

今回ご紹介するのは、自身の実践から得られた成果を自己評価することで、異動歴ならぬ成果歴によってキャリアの全体像をデザインし、 自己実現力を高めていく手法です。
例えば、昨年9月に発刊された、 元吉由紀子編著『自治体を進化させる公務員の新改善力』では、キャリアを変革レベルと活動ステージというパラメーターで図示し、それを「改善キャリアマップ」と名付けています。

改善活動の12場面に、これまで実践してきたことをプロットしていくことで、 自身がどの場面でどのようなスキルを身に付け、成果を残してきたのかを「見える化」することができます。 今の自分の到達点を知ることで、取得したいスキルやチャレンジしたいことなど、 将来のビジョンが明確になり、異動以外にモチベーションを見出すことができます。

▼改善活動の12場面
https://www.scholar.co.jp/wp-content/uploads/2023/07/230707_GMN.jpg

 

▼出所:元吉由紀子編著『自治体を進化させる公務員の新改善力』
https://www.scholar.co.jp/publication/id=9026

 

 

4.「次世代改善リーダー事例研究会」開催のお知らせ

 

自治体改善マネジメント研究会では、 今回お話しした内容に関する事例研究会を開催します。
若手・中堅職員である参加者が、互いに協力し合いながら、 自分が今の職場で自己実現していくにはどんなキャリアを形成していけば良いか、 各自治体の特徴と組織の全体像を読み解きながら、約半年間かけて研究します。
以下のリンクより申し込みいただけますので、 読者諸賢はもちろん、みなさんの自治体で、 もう一段レベルアップさせたい若手・中堅職員がいらっしゃいましたら、是非ご紹介ください。

▼お申し込みはこちら
http://jichitai-kaizen.net/aboutus/members/

 

田中 広毅 特定非営利活動法人自治体改善マネジメント研究会 副理事長

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