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行政経営デザインメールニュース 2024年06月

越境しなくても始められる越境学習

ポストコロナのVUCA時代に、企業では越境学習によって人材育成をしようという動きが出てきています。
自治体においても、越境学習を積極的に進めている事例として、2016年12月の月刊ガバナンス連載「いい役所をつくろう!」第9回「次世代の創精人づくり」で、京都府精華町の浦本佳行さんが「『ヨソ様』に職員を育てていただく」育成方法を紹介されていました。

https://br-a02.hm-f.jp/cc.php?t=D1893&a=224&c=18028&d=5f35

 

あれから7年が経過しています。 当時越境経験をされた職員たちは、今では職場の実務リーダーや管理職として活躍されていることでしょう。組織としては、このような越境経験を持つ人材が増えてくれば、組織内の仕事も進め方も変えやすくなってくるものです。


今DXで求められているトランスフォーメーションの質とスピードを実現していくためには、あらゆる階層、あらゆる分野で、より多くの職員が、多様な観点から仕事を見直し、各種の新しいパートナーと連携して仕事を 進められるようになる必要があります。予期しない変化や社会課題に柔軟かつ俊敏に対応する備えとして、フォーマルな組織の下にインフォーマルなネットワークが裾野として広がっていることが、自治体のソーシャルキャピタル(関係性資本)として重要になってきています。

しかしながら、エリア独占し、首長も職員も住民も議員もすべてが地域に密着している地方自治体においては、視点が内向きになりがちで越境してまでその関係を広げていくことに、すぐには取り組みにくいところが あるのではないでしょうか。
そこで、組織として越境学習を進めていくにあたっては、まずは職員一人ひとりが ハードルの低いところから練習を積み、外に向けた情報感度を高め、自分自身の扉を開いていくことから始める必要があります。ここでは、その初めの一歩として、越境せずに実現できる越境学習法についてご紹介します。

それは、自分たちの地域へ越境してきている人から学ぶという方法です。

近年では、採用基準を拡大して社会人経験者を採用する自治体が 増えています。専門性のある分野で任期付き職員や出向職員を 登用するケースも見受けられます。地域おこし協力隊も全国的に 多数採用され、自治体を移動して従事する方もおられます。彼らは、すでに越境して今の仕事に就いておられる貴重な越境体験者です。プロパーの職員とは異なる仕事観や組織観、人生観、ネットワークを持っているはずです。

彼らの持つキャリアについてもっと知り、その背景にある暮らし方、生き方を理解して、自分たちにも学べることはないかを考え、取り入れる試みをしてみてはいかがでしょうか。ゼロから知らない世界に飛び込むよりも、目の前にガイドしてくれる人がいれば、 違う世界とつながる接点を見出して、一歩外へ踏み出しやすくなるでしょう。 たとえば私の場合、自治体の支援をしながら、たまたまそこに出向されていた 中央省庁の職員と何人も知り合うことができました。まったく予期せぬ出会いでしたが、地方公務員とも民間企業の会社員とも異なるモノの見方、とらえ方、アクションの起こし方などがあり、たくさん学ばせていただくことがありました。いくつか例に挙げてみます。

 

●視座の違い

 

中央省庁の職員が、若いうちにいくつかの地方自治体に出向されることがよくあるようです。役職は通常の部門の課長、部局長だったり、副市長、副知事など特別職だったりとさまざまですが、いずれも視座を高くして、また、ときに組織を外から眺める客観性をもってとらえ直そうとされています。
これは単によそ者だからとか、国という立場に根付くものではなく、真意や価値を正しくとらえるために訓練して身に付けられた 「見直す力」のようです。

 

●大局観と探求心

 

視座の違いは、視野・視界の広さを伴います。そのため、部分的な情報からのみ判断するのではなく、これらをつなぎ合わせても見えない部分、 未知の部分を含めた大局観をもっておられます。そして、この大局観から、勇気ある決断と、不透明な部分を探索・探求する 「始動力」が生まれているようです。

 

●現場に出向くフットワーク

 

見方、考え方を備えて意思決定をしたとしても、それだけで現場は 動き出せません。実際に何ができるのか、何が障害になっているのかの 事実・実態をとらえておくことも不可欠です。ここで驚かされたのは、彼らが自ら率先して現場に出向き、現場の人たちと密にコミュニケーションして、しっかり信頼関係を築くことに労力を 惜しまないことです。

 

●ネットワークを長期間維持して生かす

 

さらに、こうして築いた関係を長期間維持し続けることにも努力されています。 公務員には異動がつきものですが、異動のたびにこまめに通知することにより、中央省庁に戻ってからも、自治体で築いた職員や関係者とつながりを保ち続け、出張時に訪問をし合ったり、コロナ禍などでも入手困難な現場情報を交換したり、頼れる人を紹介するなどして、直接間接を問わず関係を大切に生かしておられます。

 

●明るさ、前向きさ

 

そして、何よりもこのような関係を築き、続けていくための資質として重要なことは、その人柄の明るさ、前向きさがあることが、共通しているところだと感じられます。
公務員の方々は、それぞれに重要な責務を担い、時に深刻な場面、相容れない衝突を避けられないこともあり、苦しい局面にも遭遇しておられることがあるでしょう。しかし、それを前面に出してしまったのでは、付き合える人は限られてしまいます。それゆえ、異なる組織で、異なる価値観や経験を持つ人と出会うときには、いつでもフランクに、お互いが垣根を低くして接することができるよう、できるだけ気軽な雰囲気を醸し出しておられます。

私は、民間企業に入り、転職してからも企業を支援していましたので、それまで自治体行政組織や地方公務員との関わりはありませんでした。 ましてや国家公務員や中央省庁についての関心も接点もない状況でしたが、自治体への支援を通じて、越境人材と身近に接することができました。それが私自身の仕事の姿勢やスキルを広げることになり、後に各省庁の研修や 有識者として支援する仕事にもつながってきました。

「越境」には、自分とは違う世界との「境界を越える」という敷居の高さを 感じるところがありますが、ご紹介しましたように、「越境」の始まりは、自分の世界の中にも多くあるものです。ぜひ地方自治体職員の みなさんにおかれましても、今身近にあるかもしれない機会をぜひ探ってみて いただければと思います。

行政経営デザイナー/プロセスデザイナー 元吉 由紀子

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