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行政経営デザインメールニュース 2016年12月

気候変動の藤野学 ~住民主導による気候変動への適応活動

神奈川県の北西部、山梨県との県境に位置する自然とアートのまち ・藤野に移住してちょうど3年になります(前回、本コラムに藤野 の記事を書いたのは移住後半年の頃でした)。
http://gyousei-design.jp/column/2014/07/fujino.php

ところで、先月下旬に首都圏で積雪がありました。11月としては 「何十年ぶり」というすでに耳慣れたフレーズでの報道でしたが、 異常気象はもう「日常的」になってしまったようです。 しかしながら、生活者の多くにとっては、身近で気候変動が起きて いることはわかっていても、自分たちが暮らす地域で何か手を打た なくてはという視点には、なかなかなりにくいようです。自治体で もしっかり対応策を講じているところはそう多くはありません。

ここに問題意識を持ち、気候変動と地域を結び付ける調査・研究活 動をされているのが、法政大学・サステイナビリティ研究所の白井 信雄先生です。そして、藤野でも、私が理事を務めるNPO法人ふ じの里山くらぶとの協働事業として「気候変動の藤野学」という活 動に今年から取り組んでいます。
http://fujino-satoyama.com/topics/kouho_15/#contents_in_in

地域住民から参加者を募り、それぞれが感じている気候変動の地元 における影響事例をまず集めます。その上でワークショップを行な い、いま何が起きているのか、これから心配されるのはどんなこと かを明らかにしたり、自分たちからできることを考えて実践しよう というものです。自力でやり得ないことは、行政や政治を巻き込ん で、策を考えていく予定です。

豊かな自然に囲まれた中山間地ですから、影響事例としては必然的 に、集中豪雨による土石流や鉄砲水の発生、沢の崩壊といった自然 災害の増加とか、鹿・猪・猿などによる農作物被害の増加や熊の出 没といった自然生態系の変化に関するものが多く出てくる傾向にあ ります。

次回ワークショップは、年明け(1月22日)を予定しており、藤野 における気候変動の影響を重大性/緊急性/確実性の各観点から評 価して、全体像をつかみ、これからの取り組みに優先順位をつけよ うという場になります。 (見学をご希望の方は、ご連絡いただければ喜んでご案内します!)

私は、「プロセスデザイナー」として、この藤野という地域でも地 域づくりの“創発”にかかわりたいとあちこち動き回っています。 その背景には以下のような想いがあります。

お金があれば豊かに生きることができるという貨幣経済におけるあ る種の幻想が、さまざまなところでほころびを見せ始める中、国や 自治体も、企業も、この潮流の先にある大きなビジョンを描けてい ないようです。

ならばというわけで、ここ藤野では市民が主体になり、貨幣経済だ けではカバーしきれない部分を、異なるサブシステム(われわれの コミュニティでは、貨幣経済=かせぎ、贈与経済=つとめ、自給経 済=くらしという経済3態の上手なバランスを指向しています)で 補う「社会実験」をしているとも言えましょうか。

実は、国の中枢で働く人の中にも同様の考え方を打ち出している人 (総務大臣補佐官・太田直樹氏)がいらっしゃることを知り、意を 強くした次第です。
http://www.recruit-ms.co.jp/research/2030/opinion/detail34.html

次回本コラムを書くときには、環境に配慮した持続可能な生活や地 域のつながりを目指すライフスタイル研究所「廃材エコヴィレッジ ゆるゆる」(地元のアーティストがリーダーとなり、廃工場だった ところを、仲間たちでDIY的にリノベーションしながら、地域通 貨も導入しつつクリエイティブなコミュニティスペースを創ってい ます)のご紹介をさせていただきたいと思っています。

プロセスデザイナー 野口 正明

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