公務員のネットワーク、交流会・セミナー
2004年 冬の世話人交流会レポート
開催概略 | |
参加者が所属する団体 | 愛知県、足利市(栃木県)、板橋区(東京都)、岩手県、岡崎市(愛知県)、香川県、国土交通省、札幌市、滋賀県、小学校教諭、世田谷区(東京都)、千葉県、富山県(県、県立学校)、長野県、日本 郵政公社、広島県、広島大学、福岡市、船橋市(千葉県)、三重県、(株)スコラ・コンサルト (合計35人) |
開催日 | 2004年2月10日(火)~11日(祝) |
会場 | 愛知県産業貿易会館第7会議室&アイリス愛知 |
全体の流れ |
パート1: 一言自己紹介(この場に参加する自分の思い) |
これまで開催した7回の交流会では、それぞれの思いやチャレンジを気楽にまじめに紹介し合いながら、特にタイムスケジュールを決めることなく運営してきました。しかし、前回から参加人数も多くなり、また、それぞれがおかれている組織の特性、トップやスポンサー環境の有無、各人の抱いている思いの濃淡、実践経験の多少、立場の違い、この交流会への参加頻度などから、この会に期待する要素にバラツキが大きくなってきました。
ただ交流するだけでは、なかなかうまく情報を整理しきれないのではないかとの懸念から、今回は、特に最近の傾向をとらえ、以下の背景と目的により、上記のテーマを掲げて開催することにしました。
【1】 地方分権一括法の施行以後、各行政機関における職員研修や経営改革を推進する部署の担当者からスコラ・コンサルトへの問い合
わせが増えてきました。これは、組織風土改革に、有志が個人の思いで取り組んでいる段階から、組織全体で取り組もうとする動きに高まってきている表れだと思います。
【2】 ただし、その取組みは、現在のところまだ講演会の開催やオフサイトミーティング体験の場づくりといった単発的な試行に留まり、継続的に変革を実現していく本格的なプロセスデザインの動きにまではなかなか至っていない状況があるようです。
【3】 そこで、今回は「変革型人材の育成」をテーマとして、変革を実践につなげていくために必要な要素は何か、それを可能にする人づくりと人のネットワークづくりをどのように進めていけばいいのかという視点から、それぞれの組織で取り組んでいる実践を振り返り、そのプロセスの意味合いを一緒に考え合っていくことが有効ではないかと考えました。
【4】 また、それぞれの組織において研修担当や改革推進担当という“立場”を活かして組織内に火を付けてきた“有志”がいても、年度毎の定期異動によって担当者が替わることがあります。その場合、どんなに引き継いでも、背景にある思いの部分については容易に後任者へ伝承できるものではなく、立場を超えて注いできたパワーは減少してしまうだろうと考えられます。
【5】 一方、この会のように、組織の枠を越えて有志が集まる場は、それぞれの思いと実践で得た経験知を伝播しやすい場となっています。そこで、単独の組織における経験知を広く他組織にも活きる経験知として共有しておくことができれば、相互に学習し合う関係の中で日本全域としては後戻りできないリカバー機能を果たし得るのではないかとの期待から、年度末のこの時期に1泊2日の交流会を設けることにしました。
交流会の案内を発信後、参加希望人数が予定の20人を超えてきた頃から、この会で密度の濃い交流を図ることが困難であると予想されました。そこで、参加者どうしが当日会場で少しでも有効に交流が図りやすくなるよう、「この人に会えるんだ、楽しみだなァ~」「この人とこんな話をしたいなァ~」と思えるように、事前に自己紹介を、参加者で構成するメーリングリスト上で発信し合おうという呼びかけをしました。
これには、ほぼ全員が自由な思いや以下のエッセンスを発信する結果となり、こうした「助走」によって、気持ちを多いに温めて参加されたものと思われます。
・ 私ってこんな人(いつもの人となり、素顔、特技、趣味、家庭など)
・ 今どんなことにチャレンジしている(しようとしている)のか
・ 現状ぶつかっている悩みや課題
・ この会に期待していること
・ 将来、やってみたいこと、夢
・ 公務員の世界について感じること(現在の改革の進め方とか、過去から引きずっている体質とか)
・ 最近感動したこと
・ くじけそうになった時の自分なりのスランプ脱出方法
・ ・・・・・・など。
まずは自分から
・ はじめのうちはおかしいと思っていた公務員生活も目先の仕事をこなすうちに…。今からでも遅くないかも、という気持ちがある。
・ 新人の時に疑問に思ったことを改善に結びつけようとする人もいれば、そのまま染まってしまう人もいる。
・ できない理由ばかりを引きずっていることを変えたい。
・ 明るく楽しく。組織を変えるのではなく自分を変える。日々の仕事の肯定から始める。
・ それぞれの職場は違う。先ずやり始めることから。組織を変えるには先ず自分を変えていくことから。できるところからやっている。
・ 事務所の中で「仕事を聞く会」などをやっている。
・ 若い人たちのムーブメントになれば、と考えている。
・ 自分たちが一番時間とエネルギーを費やしているのは本業の仕事。結局は仕事の中でしか変われないのではないか。
・ 自分では仕事と密接であることが大事だと思う。「公私混同」ではなく「公私融合」だと、ある人が言っていた。
・ 組織の改革としてではなく自分の改革を目指している。人事担当者が「意識改革」という言葉を使うが、分かって使っているのか。
・ 人に変われ、というよりまずは自分が変わることから始める。
・ 自分が責任をとる、といったら何も言われなくなった。一歩踏み出すことの大事さを感じた。
・ 理屈で押すのは無理でも共感に訴える方が有効な場合もある。組織としては堅くても個人レベルでは共感してもらえる人はいる。
・ 最初は不満ばかり言っていた人たちが、「できるところから始めよう」に変わった。
・ 単に事務を改善するのではなく、コミュニケーションの中から気づきが生まれてくる。
・ 悩んだことの方が成果がある。恥をかくことによって身に染みる。
・ 一生懸命が恥ずかしい、ということは孤立したことがないとわからない。半歩出るチャンスを作る、手を挙げる言い訳を提供する、というのはありかもしれないが、その先はどうするか?
現場の「原石」のネットワークを
・ 自分の組織の中で熱い思いをもつ人を探したい。
・ 現場には「原石」がごろごろ転がっているのになかなか日の目を見ない。点在している能力を顕在化していきたい。
・ 上司から命令された「世話人」はいるが、本人は本気でやっていない。自分からやろうという人間は隠れていて見えないんだと思う。見回しているがみつからない。
・ 自分は現場でスポンサーの立場だが、ネットワークを作って練り上げて提案してくれる人が欲しい。
・ 集団の器の中でこそ、個人が自律する。若い人を育てたい。原石を磨いてあげたい。
・ 現場の人たちがキーマンにならないと動かない。
・ こういう活動は自分が直接やってしまうと人に伝わらない。現場で一緒に困ることが大切。
・ フラットな関係の仲間を作るといいと思う。
・ 物理的に離れていてもネットを使って「出る杭」の人をネットワークしていく。
・ 若くて元気のある職員にとって「師匠」の存在が大事だと思う。
・ こういう不安定な時期にはゲリラ戦でやれる部分があるのでは、と思った。
・ 個人的なつながりを広げ、小さくても成功事例を積み上げていかないと。
・ 人をくっつけても活躍する場がないと意味が無い。「もう評論家はいらない」。大根役者でもステージに上がった方がいい。
・ 自分たちが思っていることを庁内に、庁外に発信できる場を設けていく必要がある。
「研修」の難しさ
・ 研修担当になって2年。職員のためになっているのかを感じる。何のために研修をやっているのか。
・ なぜ研修だと難しいか。それは研修を担当している人事が一番体制、秩序を守ろうとしている部署だから。
・ 企業でも研修をやる部署としては人材開発部などがあるが、その部のミッションは研修を実施することではない。人材育成の責任は部門長にあることをPRするべきではないか。
・ 昨年から研修所をやめた。人材を高めるのは現場。部局長では現場から離れ過ぎて総花的な話しか出ない。
・ 研修所の言う「サポート」は、単にメニューを示すだけに終わるのではないか。
・ 現場で必要なものを個別に提供できるのがサポートだ。
・ 研修所がどういう風に現場と関わりを持つか、と考えること自体が風土改革に近づいていると後から気づくかも知れない。
システムと風土の改革
・ 首長が声をかけても現場が動かないジレンマがある。
・ システムは整いつつあるが、それを扱うソフト(人)が伴っていない。
・ 庁内でシステムの説明会を何十回もやってきたが「あとは皆さんやってください」が公務員の仕事のやり方だった。本当にそれでいいのか。システムを作っても現場で回っていかなければ意味が無い。
・ よその改革ツールを形だけ輸入しても無理。自分たちが、県民・市民が何に困っているのかを積み上げていかないと形だけの改革に終わる。
・ 「守・破・離」という言葉がある。最初は型から入り、次ぎに型を破っていくという流れをつくれないものかと模索している。
・ 管理部門(総務・財政・人事)の若手がオフサイトミーティングをやっているが、自分がやらないで人に壁にぶつかれ、といっても自然循環が起きない。
・ 管理セクションの人たちは職員をサポートするはずなのに職員を信用していない感じがする。
・ 仕事を通じての変化、取組みがなかなかできていなかったのではないか。
・ システム改革が進んでいない。現場のがんばりだけが突出していて、既得権益に踏み込むきつい改革には手をつけていない。
・ 人事制度改革より風土改革を進めたいが、人事制度が大前提になっていないと職員から信頼されない。
・ 本当に仕事のやり方を変えるには人の意識だけではダメでシステムも変えていかないといけない。
・ 人材育成方針のワーキンググループのメンバーだったが、行革の一貫として進めないと、という意識があった。
・ 行革セクションとの連携が難しい。自分たちでの働きかけがうまく行っていない。
・ 行革をやるところからはオフサイトはなかなか理解しにくい。
・ 上司に風土改革の話をすると「宇宙人と話しているようだ」と思われている。「分からないからやめろ」でも「分からないけどやれ」でもなく、「分からないものには感知しない」という状況にあるのでは?
・ 上から「風土改革をやれ、ワクワクドキドキする会議をやれ」という通知が来て、それだけで終わってしまう。やるなら、前に出て自らの顔が見えて来ないとワクワクしない。
・ 現場の上司がオフサイトをわからないことが多い。
・ 現場での理解が大事。理解がうまくいかないとかえってブレーキになってしまう。
・ 役人は「言われたことを言われたとおりにやる」能力は高いが、なぜやるのかは考えない。
・ オフサイトも「何のためにオフサイトをやっているのか」をしっかりしておかないといけない。
・ 手段が目的化してしまって、オフサイトをやるのが目的になってしまう。目標を定めておかないとオフサイトミーティングだけやっても解決しない。
・ その問題を何とかしないと、と思っている人が一番適任。課長層が一番のターゲット。組織の中でこういう仕事のやり方がいいということを認知してもらうことが今できることではないか。
・ 広げたハンカチを持ち上げるには、全部を同時には持ち上げることは難しい。持ち上げられるところから摘み上げると全体が引き上げられてくる。
・ 「点」で職員が仕事のやり方を変えて行った事例はあるが、それが広がって行かない。
・ 幹部、上司、同僚ががんばった職員の努力を認めて励まし合うことを重視している。
・ 褒めることは非常な体質改善だと思っているが、日本の風土として「けなす」風土があるのでなかなか踏み切れない。
・ それぞれの自治体で背景が違うので、形だけまねしても仕方が無い。
・ 成功するまでやることが成功だ、という話があった。
世話人交流会の感想と今後の運営について
・ 元気をもらえた。疑問に思う視点を忘れずにいたい。
・ いろいろな人が悩みながらやっているということを学んだ。
・ 最初は「変える」話を聞くことを目的にしていたが、自分にとって身の丈にあったことをやっていきたいと思った。
・ 自分は“立場”ではなく参加している。仕事ではないので異動があっても我々は何の影響も無い。まんざらではないのかも知れない。
・ 全国で底上げされるんだろうと思う。点を線に、線を面に。地元でもネットワークをつくっていきたい。
・ この交流会が最初の頃と変わってきている。以前は自治体からの参加者は自ら行動している人間が多かったが、研修や人事の担当者が増えた。「風土改革」ありきで話が始まるのはおかしい。
単なる研修所、組織風土関係者の研究会になったらつまらない。その意味ではこの交流会も難しい時期になってきていると思う。
・ 昨年、庁内で個人的に始めたオフサイトも最初は7名くらいで和気藹々とできたのだが、人数が増えてからうまく行かなくなった。
・ 何かしようとしたけどできない悩みを共有する場を自分たちでも作って行くことを考える時期が来た気がする。