公務員のネットワーク、交流会・セミナー
2005年 夏の交流会レポート
開催概略 | |
参加者が所属する団体 | 愛知県、(財)淡海環境保全財団、大津市(滋賀県)、岡崎市(愛知県)、亀岡市(京都府)、金融庁、京丹後市(京都府)、京都府、草津市(滋賀県)、熊本市、札幌市、滋賀県、滋賀県市町村職員研修センター、城陽市(京都府)、宝塚市議会(兵庫県)、千葉県、知立市(愛知県)、富山県、長崎県、西宮市(兵庫県)、日本郵政公社、人吉市(熊本県)、広島県、(財)びわ湖ホール、福岡市、廿日市市(広島県)、船橋市(千葉県)、舞鶴市(京都府)、三重県、三次市(広島県)、横浜市、<学陽書房>、スコラ・コンサルト(五十音順)(合計67人) |
開催日 | 2005年7月2日(土)~7月3日(日) |
会場 | ピアザ淡海 会議室(滋賀県大津市におの浜一丁目1番20号) |
今回の運営チーム | 池上 順史(札幌市)、小山 巧(三重県)、渋谷 克人(富山県)、初宿 文彦(滋賀県)、中西 大輔(滋賀県)、橋本 康男(広島県)、元吉 由紀子(スコラ・コンサルト) |
(1) 自主運営の試み
前回までは、この会の発起人であるスコラ・コンサルトの元吉さんに全面的にお世話をいただいていたのですが、全国から集まる仲間が増えてきたことから、より継続的で安定的な発展を続けていくことをめざして自主運営を始めようという呼びかけを、某メンバーが交流会参加経験者で構成しているMLに発信しました。その呼びかけに応えて、札幌から福岡まで全国で7人のメンバーが手を挙げ、3月に運営チームが立ち上がりました。
その後は、今後の交流会の運営のし方や今回滋賀で行なうプログラムなどについて、電子メールにより打ち合わせを重ね、さらに、交流会前日には滋賀県に前入りして、話し合いの詰めを行ないました。今回の滋賀での交流会は、この新しく発足した運営チームによって自主運営の取り組みを始めたという点でも、新たな進展と言えます。なお、当日は運営チームメンバーが交流会の全体会と各分科会の双方でコーディネーター役を務めるというトライもいたしました。
運営の準備の中では、目的を共有しながら粘り強く議論をすり合わせていくことの大変さや、メールでの意見交換の難しさを痛感しましたが、こうした準備の過程も私たち運営チームメンバーにとってとても良い経験になったと思います。
(2)「交流会の目的、目標、運営」について
自主的な運営に取り組むにあたっては、様々な思いを持って参加するメンバーが安心して交流できるよう、会の目的なども改めて確認し合いました。
目的としては、「公務員としての責任をよりよく果たしていくために実際の行動を大切にする者たちが集まり、互いに思いを共有し確認することで、連携し励まし合い、元気と自信を得て、自らの次の行動に結び付けていくこと、公務員として良い仕事をしたいという個人の思いを生かし、組織風土改革の動きにつないでいくための場づくりを考えること」であり、具体的な目標としては、次の3点をめざすことを共有しています。
・参加者が思いや悩みを共有し、元気が出るような場をつくること。
・具体的な変革プロセスを経験し合う場をつくること。
・参加できなかったより多くの人たちにも、励ましとなるような情報発信をすること。
また、運営にあたっては、「知識先行で理論や理屈を振りかざすのではなく、現場の実践の中での個々の迷いや悩みを大切にし、具体的な行動・取り組みを基本とした組織風土改革のための場づくりをめざす」こととしています。
~滋賀県職員有志「チョウチョの会」とのタイアップ~
2000年春から年2回の頻度で開催している交流会は、今回で11回めとなりました。
開催にあたっては、滋賀県職員が職員有志のネットワークである「チョウチョの会」を立ち上げて1年めの記念フォーラムを予定しているという話題を提供したことから、このような活動をしている職員と交流会メンバーがそれぞれの思いを共有し、現在の悩みや今後の活動への期待を聴き合うことができれば、お互いに次の行動を考えるよいきっかけになるのではないだろうかという話が持ち上がり、開催場所を滋賀県大津市で行なうことにしました。
このようにチョウチョの会とタイアップしたことや、分権自立を目指した自治体改革の動きが広がっていることなどから、今回の交流会は、北は北海道札幌市から南は熊本県人吉市まで、全国から計67人が参加する大盛況な会となりました。
会場は、開催地である滋賀県からの参加者に手配して頂いた、びわ湖のほとりの会議室。日頃の心の垢を落としながら、まさに「オフサイト」気分を満喫することができました。
この滋賀での交流会は、「チョウチョの会」の皆さんの協力なくしてはありえませんでした。全国から集まった参加者と、開催地の自治体職員との交流という点でも、有意義な会であったと感じています。
また、2日目の午後に予定されていました「チョウチョの会」の記念フォーラムには、北川・前三重県知事が講演をされた後、滋賀県職員と交流会メンバーの有志が参加するパネルトークが催され、見どころも豊富な2日間でした。
今回の滋賀での交流会は、参加者67人のうち44人が初参加でした。
7月2日土曜日の午後1時半から翌日曜日の正午まで、延べ12時間にわたり、分科会と全体会で互いの思いを語り合った後、日曜日の午後には、チョウチョの会主催のフォーラムに合流しました。
初日はまず、スコラ・コンサルトの元吉由紀子さんに基調講演をお願いし、いま組織変革の方法論がかわってきていること、進化し続けられる組織の条件等々についてお話しいただきました。そうして、私たち参加者自身が「思い」を「行動」に変えていくために、その後の分科会の中で明日へのヒントを探ろうとしました。
その後の分科会では、「自分から変わろう!」、「組織を変えよう!」、「まちを変えよう!」の3つのテーマに分かれてオフサイトミーティングのスタイルで行ないました。テーマ別には分かれたものの、公務員として良い仕事をしようとするならば、この3つのテーマは一つのつながりを持っており、「組織風土改革」について全体感を持って語るべく、視野を広げることができたように思います。
初日の最後の全体会では、各分科会に参加した一人ひとりの感想・気づきを披露し合いました。その後の懇親会では、びわ湖を眺めながらバーベキューを堪能。さらに話し足りなかった人たちは2次会会場へ向かい、思い思いの夜を過ごしました。
2日目は、朝のエクササイズ「10秒で体験できる組織改革」で体をほぐした後、7グループに分かれてオフサイト。11:20に再度集合して全体会、各グループで話された内容を共有し、交流会を終了。大半の参加者はそのまま「チョウチョの会」フォーラム会場へと向かい、「北京の蝶」ならぬ「滋賀の蝶」の羽ばたきを目の当たりにしたのでした。
参加者からは、「それぞれの実践での取り組みの中での悩みや思いを語り合い聴き合い、自分が持っている問題意識が間違っていないことが確認でき、職場に帰ってからの新たな元気を得られた。」、「それぞれの立場で高い志を持ち、真剣に悩み、考えているから、そして、実践を伴っているからこそ説得力があり、納得できるのだと思う。『一人称』で語ってくれる人の話は聴いていて共感できるし、心地良い。この会に参加すると自分の中のモヤモヤっとしたものの『方向性の確認』と『優先順位付け』ができるし、このスッキリ感があるから『また参加しよう』と思う。」、「自分が気づいて、自分が変わって、成長していくプロセスを自分が楽しむことが大切だと感じた。」などの声が寄せられました。
●Aグループ(テーマ:自分から変わろう!)
・ 自分が変わることは組織が変わることにつながるということを感じた。
・ 職員に変わってもらえるにはまず自分が変わる。モチベーションの高め方の話ができた。
・ 何かを変えるためには自分自身の信念、アイデンティティが必要。
・ 非常に刺激を受けた。自分が今まで、周りが変わることを望んでいたことが分かった。
・ 皆さん自己開示が上手だと感じた。とても大事なことだと思う。
・ 「自分が変わること」と「理念の共有」の大切さが腑に落ちた。
・ これまでオフサイトの担当をしてきて、まだ自分の中で何ができるかというもやもやとしたものもあるが、今回、チョウチョの会のフォーラム開催に至り、感慨を覚えている。
・ 自分が変わることと組織が変わることはイコールではないかという話が自然に出てきた。自分の組織に戻ったときに、そのことがピンとくる人がどれだけいるかと考えると心許ないので、これからが大事だと感じた。
●B1グループ(テーマ:組織を変えよう)
・ 組織の中でどうしていくか、同じような悩みを共有できた。現場と企画部門の乖離の問題の話が出たときに、神戸市の方から、庁内行脚をしているという話を聞いたのを思い出した。
・ 皆が気づいても、最初の一歩がなかなか踏み出せないのだと思う。インフォーマルな動きからフォーマルな動きに変えていく仕掛けをどうするか考えていきたい。
・ 組織変革の理論でいえば、危機意識の共有の部分で躓いており、皆そこで苦労しているということが分かった。
・ いくら危機を話しても現場からは頭ごなしに行っているように感じられる、ということを痛切に感じた。地元に帰ってまた議論をしたい。
・ それほど改革が進んでいないと感じており、今日のような場には、自分の職場の課長さんたちに是非来てほしかった。
・ 市からの参加者が多かった。市と県の間の壁があること、変わっていかなければ、ということを感じた。また、危機感がない組織をどうするか。ダイレクトに話をしても反発を食うだけだが、小さな動きからだんだん変わっていくこともできるのではないか。
・ 県と市、現場と官房系、といったキーワードが出てきた。結構いろいろな話に散ってしまったが非常に楽しくお話ができた。
●B2グループ(テーマ:組織を変えよう!)
・ 経験豊かな方が多く、貴重な話を聞くことができ、充電できた。極め付きのお言葉は、「変革は必要だが壁がものすごくある、リーダーの壁もある、しかし、常に変化をし続けることが必要だ」という言葉をいただいた。
・ 今回参加している中で唯一の議員。ミーティングの中で感心させてもらうことができた。いろいろな方の話の共通項は、職場のメンバー同志のコミュニケーションの不足ではないか。まずはそこから始めないといけないのでは、と感じた。減点主義ではなくチャレンジを支援する加点主義が必要ではないか。
・ 経験豊富な方が多かったが、悩みは共通であることが分かって有意義だった。
・ オフサイトミーティングとは何か、を一言でいうと信頼感を作ることではないか、と思った。組織を変えるには信頼感も要るし、火をつけて回る、という話もさせてもらった。
・ 合併市の中で非常に熱心に議論されているという事例を伺って、感銘を受けた。
・ 最近不安に思うことは、現場と自分たちとの遊離。自分の判断が冷たい判断になっているのではないか。
・ 公務員に腹が立っている、身銭を切って勉強しているのか、というお話があった。民間では勉強するのが当たり前だと。こういう目があることを意識する必要があると思う。
●B3グループ(テーマ:組織を変えよう!)
・ 今までは明日も仕事があるのは当たり前だったが、厳しい状況の中で、身近な問題を解決していくこと、実践と継続が大切と感じた。
・ アドバイスをいただくことができた。自分の現場に合ったやり方をやっていきたい。手段を目的化しないことの大切さを感じた。
・ 今の職場は常に自分に問いかけるモチベーションを持ち続けることが難しいので、今日は良い機会だった。
・ 非常に刺激を受けたし、悩みを共有することができた。今後の行動改革につなげたい。
・ 今日の議論の中でオフサイトミーティングのやらされ感の話が出ていた。それ自体が目的にならないように、普段の職場の会議もオフサイト的にしていけたらと思う。
・ 改革のツール(ハード部分)では、各自治体でかなり取り組まれているということがよく分かった。ただ、それが現場まで浸透しているかというと難しいと感じた。また、今やっていることも、何年か経つと役に立たなくなる。何のためにやっているか、という目的意識の共有が必要だと感じる。
・ エコオフィス改革の事例や、フリーアドレスをモデル的にやっている事をお話させていただいた。
・ これまでにシステム的な改革は進めてきたが、現場には落とし込めていないと実感している。現場が変わり、サービスが変わらなければ、組織が変わったという認識をいただけない。日々、住民と一緒に変えていく取り組みを続けていくことが、組織や自分を変えることになる。
●B4グループ(テーマ:組織を変えよう!)
・ 一番印象に残ったのはフェイス・トゥ・フェイスという言葉。この班には実践者の方が何人もいらっしゃり、面白くためになるお話を伺った。個人的には、実践をサポートする仕事をしているので、そういう人のお話も聞きたかった。
・ 「チョウチョの会」のお話を聞いて、組織にも個人にも成功体験が必要、ということを感じた。また、滋賀県での実際の取組みを伺って、なんて素敵なんだろう、私も滋賀県に入れてほしいと感じるほどだった。
・ 目的に向かっていくうえで、いろいろな危ない方法を覚えてしまったが、目指しているところは皆、同じだと思った。オフサイトも、それがとっかかりになっている人もいれば、これを何かに使おうという人もいた。
・ 自分もオフサイトの世話人をやり始めて、悩みがあったが、アドバイスやヒントをたくさんいただくことができた。
・ 皆さんのお話から、インフォーマルの底力を教えてもらった。また、住民の視点を持ってオフサイトをやらないと絶対失敗するという点が、実体験と確信を持って語ってもらって強く印象に残った。
・ いま一番関心を持っているのは、退職される男性のサラリーマンを地域でどう資源化するか。これが効いてくる。資源化しないと社会コストになる。
・ 合併した市町村の職員の方々の中で、オフサイトやランチミーティングは非常に有効に使えるのでは、と感じた。
・ 成功体験がすごく重要なのではないか。今回のチョウチョの会の皆さんはすごい成功体験とともに後戻りができないというすごい財産を得た、と感じた。とりあえずは動くことが大事。
●B5グループ(テーマ:組織を変えよう!)
・ チョウチョの話は三重県ではずいぶん聞いていたが、こうして滋賀で孵化していることにびっくりしている。人と人との関係性を楽しんでいる人がいい組織人になり、いい組織を作る、ということを思った。ミッションとパッションという言葉を思い出した。
・ 組織の良い面を見ることも大切だと感じている。良い面を見れば知恵も出る。
・ 楽しさ、という話が出た。コアになる人たちは熱い思いを持ちながら、それをそのまま外に出すと暑苦しい、そこの間の仕掛けが必要なのだと思った。
・ 楽しさが大事だが、一方で、このように外に出る機会を持てずに鬱々としている人もいるのではないか。
・ 上司に勧められての参加だったが、ものすごいおみやげをもらった。感じたのは、皆さん、個人としてのパワーがすばらしい、ということ。パワーがあるからやっているのか、やっているからパワーが出るのか。私のまちでも、小さなことからコツコツとやっていきたい。
・ 自分の自治体で、半年前からオフサイトをやっている。ほとんど一人で運営をやっており、最初はかなり苦痛だったが、最近はだいぶ軌道に乗ってきた。最近では市長にもスポンサーシップを発揮していただいている。今日は、楽しくやる、という話に、ああそうだな、と思った。組織が変わる以前に、自分の気づきから、ということを感じた。
・ チョウチョの会は好きでやっている。そのプロセスが学習や気づきになっていると思う。辛そうにやっているとみんな逃げていく。いろいろな思いを持っている人が集まれる場をつくる、というオフサイトの精神を今日は感じることができた。
●Cグループ(テーマ:まちを変えよう!)
・ どうしたらいいか、という話の中で「楽」・「楽しい」という話が出てきていた。気楽な感じでまちや自分を変えられる仕掛けが必要じゃないか。いろいろなところで種を蒔けたらと思っている。
・ 現場で話を聞く必要性を改めて感じた。Bグループとのテーマの違いは、対象がたまたま職員か住民かの違いだと思う。
・ 皆さんがいろいろな方向からものを見ている、ということを感じて心強い。自分は押しつけがましいものは好きではないが、自分自身も何か楽しいものを見つけながら関わりたい。
・ 自分を変えて周りを変えることの大変さを感じた。
・ 去年はツール論に悩まされ、まだ成功体験はできていない。役所の中を変えることに加えて、まちをどう作るのか、という自治の原点をもう少し勉強していくことによって行革が分かるのかなと思い、Cグループに参加したが、今日はどのグループも「信頼関係を作る」という同じことを話しているのだと再認識した。また、現場に出ていって、市民の中で話しをし、黒子になることで信頼を得る、それこそ行革ではないか、という気づきをもらった。
・ 今日ここに来て感じたのは、言葉が通じる、居心地がいい、ということだった。最初に種を蒔かれたところから、今日の場のように動きが広がっていることに感激している。
・ 人事考課を担当、日々悩んでいて、何かヒントをということで参加した。横浜の泉区役所の話からも学ばせてもらった。
・ 皆さんから話が出たのは、現場に飛び込んでいって話をすることの楽しさ。同時に、出ていった人に対するセーフティネットが必要ではないか。これだけ実践している人がいるのに、情報が流れていない。なぜ多くの人は現場に情報を探しに行かないのか(いい仕事をしようと思っていないから、情報を探しに行かないのではないか)。今までは決まりきったことを確実にこなしていく行政の仕組みだったが、見えない新しいものをどうやってつくるかが重要になっている。
また、個別の話では、横浜市の事例を紹介していただいた。地域課題に対して先手を打っていく体制を整えているのはさすがだと思った。
・ 行革って突き詰めたら何だろう、という話をしたときに、結局、市民と職員がカウンター越しではなく対話ができるようになることが行革なんだ、という話に至り、感動した。
この交流会も、参加者が増え、その持ち寄る思いも様々です。けれども、公務員として良い仕事をしたい、威勢のいい掛け声だけではなく、個人の思いや悩みを大切にしながら、実践を通じた個人の思いや悩みを共有し、励まし合い元気づけ合える場として、発展させていきたいと考えています。
そのために、今後も、安定的な運営体制をつくるとともに、滋賀のチョウチョの会のような全国各地の取り組みとの連携も進めていきたいと考えています。
そして、そんな公務員の思いがつながり、大きなうねりとなり、全国の自治体において組織風土改革を通じて、ありたい社会づくりの動きが広がっていくことを期待しています。