Column コラム
行政経営デザインメールニュース 2025年04月
公務員の組織風土改善成果報告<職場編>より
NPO法人自治体改善マネジメント研究会では、政策、施策を推進していくうえで抱えている課題を解決していくために、 仕事と人の両面からアプローチする「組織風土改善セミナー」を開催しています。毎月1回WEBで互いの取組を共有し合い、経過をふり返りながら、次の一歩の相談をして実践に生かしています。セミナーは、半年を1クールとしていますが、参加者のほとんどは通年で継続参加し、年度末に実践者の一部メンバーが、成果をオープンに共有する機会を設け、所属する自治体の内外に活動の輪を広げていこうとしています。
今回ご紹介する事例は、発表者4人のうち職場の課題解決に 取り組まれた2人の事例です。
▼発表者が報告会に先立ち、事前発信したメッセージが掲載されている 前回のコラムはこちら
https://gyousei-design.jp/column/2025/02/post-158.php
【報告1】 荻布 彦 (おぎの ひこし)
富山県 職員キャリア開発支援センター所長・職員キャリア相談室長
「職員のウェルビーイングを目指して~自治体初のセルフ・キャリアドックの舞台裏~」
<ねらい>
職員のモチベーション、エンゲージメントが低いことに課題意識を持ち、自らの経験から、富山県職員のウェルビーイングを高めるために自律的なキャリア開発が重要な取組だと考え、新設された「職員キャリア開発支援センター」「職員キャリア相談室」で、自治体初の「セルフ・キャリアドック」の導入を目指す取組。
<ポイント>
新設組織の立ち上げや運営、セルフ・キャリアドックの導入について、 オフサイトミーティングを活用して室員のコミュニケーション、合意形成を図りたかったが、室員6名中4名が研修所との兼務で 繁忙期であったことから、やむを得ずチャットによる提案、合意形成を図っていた。
12月になってようやくオフサイトミーティング開催が可能となってきたので、まずは心理的安全性、メンバー間の信用性を高めるジブンガタリから始め、自らの課題に向き合うモヤモヤガタリへ展開していった。
<得られた成果>
スポンサーシップを発揮しやすい環境を提供できたこと、 メンバー間で目標を共有し「目標に向かってメンバー同士でフランクに話し合っていいんだ」という雰囲気を醸成できたこと、現状の課題に対する解決策(ケース会議)の提案が自然に出されたこと、人事部門への提言など相談室の活動の本質的な方向性についての 意見が出たことなど。
<見どころ>
荻布さんの取組は、富山県職員全体のやりがい、ウェルビーイングを 目指すものですが、オフサイトミーティングを活用して、相談員同士が思いを聞き合い、意見・アイデアを出し合うことによって コミュニケーションの向上、取組目標の理解・共有を図り、セルフ・キャリアドックの導入を目指す職員キャリア相談室の職員から キャリア自律とウェルビーイングを実現していくという、 大きな目的に向けて足元の組織から始めるという変革の着実な第一歩を 踏み出していると言えます。
【報告2】 中村 暁晶 (なかむら あき)
公益財団法人横浜市国際交流協会 多文化共生推進担当課長
「過去にとらわれず、前向きな組織づくりに向けた取組~組織作りの前に人づくり~」
<ねらい>
多くの外国人の方が生活する大都市圏で、外国人の日本語学習や生活支援、 社会制度についての様々な啓発活動、文化交流活動等を実施し、地域課題解決や多文化理解の促進に取り組んでいる財団法人の 「時代に合わせて仕事を進化させることを一人ひとりが役割として認識し、 行動できるようになる組織」への変革の取組。
<ポイント>
自ら仕事を創造することが求められる今の時代、 いままでの仕事の仕方への考え方を変え、内向きの姿勢を外向きに変え、時代に合わせて事業をアップデートしていく必要があり、それには職員一人ひとりのマインドチェンジが大切との認識から、年代、国籍、母国語がまちまちの言語専門職スタッフ12人を含む 15人のスタッフでオフサイトミーティングを活用し、「われわれの仕事は誰のために、どうしていくべきかを考えて、気づくところから始め、行動するのは誰の役割か」を話し合った。
<得られた成果>
オフサイトミーティングを進めることで、変わるには自分自身の想いと 組織の方向性との接点を作ることが大切であること。ジブンガタリ、モヤモヤガタリで「言葉の解釈」がそれぞれの経験で異なることに気づき、心理的安全性が実現されることで弱音が言い合える関係性ができてきたこと。
ありたい姿を話し合い、方向性が確認でき、やってみる気持ちが湧いてきたこと。
方向性、価値観、思いを共有することで、ありたい姿に向かって課題は乗り越えられると感じたこと。
時代に合わせて事業をアップデートしていく方向性が 組織内で共有され、アイデア出しするようになり、新規事業の可能性が 広がってきたことなど。
<見どころ>
中村さんの取組は、外国人の生活支援や地域課題解決、多文化理解などを促進する事業を、時代に合わせて進化させることを目指すものですが、国籍、言語、文化の異なる言語専門職スタッフと、対話の積み重ねによる課題解決を実践するオフサイトミーティングを取り入れ、うまく活かして肩書やアイデンティティ、言語を超えて本音で話し合える 関係性を築き、ありたい姿をともに描き、思いや価値観、めざす方向性を共有できてきたことは、多文化共生の地域社会実現に向け、組織としての大きな一歩だと思います。
「公務員の組織風土改善セミナー」は、課題、問題を解決したいと 思っている人たちが、組織風土改善のポイントを学び、 周りの人たちと共にプロセスの実践を通じて解決を図っていくことを 目的としています。【基礎コース】では、改善に向けた基本的なチェックポイントの理解と 改善への取り組みの第一歩を踏み出す場づくりをし、【実践コース】では職場で実際の動きを創り出しながら 継続的な学習を通じて改善力をアップし、課題を解決していきます。
今年度の仕事をスタートするにあたり、仕事の仕方を見直したい、職場のチームワークを良くして組織風土を改善・改革したい、地方創生やDXなど新たな課題にチャレンジしたい、他部署や他機関、 公民の連携・協力関係を築きたいと思われている方は、先ずは本セミナーの基礎コースからご一緒に取り組んでみませんか。 申し込みを開始していますので、ご参加をお待ちしています。
▼「公務員の組織風土改善セミナー」【2025年度上期 基礎コース】の申し込みはこちら
https://peatix.com/event/4320217
NPO法人自治体改善マネジメント研究会会員 小山 巧(元三重県職員、元三重県病院事業庁長、元南伊勢町長)